物流倉庫で活躍する最新ロボットを紹介 ~①入荷編(デバンニング、デパレタイズ)~(各社へのリンク集としてもお使いください)

  • 2024年3月20日

物流領域でもDXというキーワードを目にする機会が非常に多くなりました。DX推進をミッションとする組織や責任者を配置する物流事業者も、規模の大小を問わず増えてきたと感じます。物流ロボットは、ECの増加による構造変化や、今後より深刻化する人手不足へ対応するための有力な手段として期待が高まり、物流DXの中でも特に重要なテーマのひとつです。

従来のマテハンと比較してのロボットの大きな特徴は、規模や出力を、荷物の量や業務の繁閑に応じて柔軟に調整しやすいこと(大きな変化として、拠点の移転や統廃合があっても同じ仕組みを転用しやすいとされます)、初期投資額が相対的に小さいとされること、などがあります。もちろんこれは、全てのロボットに確実に当てはまるということではなく、両者の比較において一般的によく耳にすること、となります。例えば、まだ普及期に来ていないようなロボットであれば、必ずしも投資額は小さくはならないでしょう。

ここでは、今実際にどのような物流ロボットが存在するのか、網羅的に紹介していきます。個別のロボットについての詳しい機能や導入事例については今後また別の記事で取り上げていくことにして、今回は全体像としての把握と、各社のURLや連絡先も記載するため、リンク集という位置づけで参考にしていただきたいです。

なおここで扱うロボットの定義ですが、あまり厳密な基準は当てはめず、名前にロボットと付いたものはなるべく広く取り入れるようにしています。ロボットの厳密な定義としては、「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」(NEDOロボット白書2014)というものがあります。

物流ロボット全般について、その市場動向や代表的な種類、関連する情報システム、そして導入方法やその課題まで網羅した完全ガイドも合わせてご覧ください。

トラロジ|物流領域におけるTransformationに特化したメディア

物流ロボットについて、その種類やメリット、関連する情報システム、そして導入方法から普及にあたっての課題まで幅広い論点を網…

目次

物流倉庫内で活用できるロボットを網羅して紹介  ~ この記事シリーズで対象とする範囲 ~

この一連の記事では、一般的な物流センターで行われる業務として、入荷してから保管を挟み、出荷されるまでを対象範囲として、その中で活用できるとされる物流ロボットを紹介していきます。今回はその1回目として「入荷」部分を取り扱います。

第2回目の「出荷編(ピッキング)」についての記事は下記よりご参照ください。

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[最新の更新内容]ソリューションの紹介にラピュタASRS、Airrobを追加しました。 ———————————…

物流センターで行われる業務

物流センターの業務プロセス(概要レベル)

入荷業務で活用されるロボットの種類

デバンニングロボットとデパレタイズロボット

入荷業務で活用されるロボットには、大きく分けて2種類あります。1つはコンテナに詰められた荷物を降ろすデバンニングロボット、もう1つがパレットに載せられた荷物をパレットから移動させるデパレタイズロボットです。デバンニング、デパレタイジングと「ing」で揃えた方が、レベル感が合うようにも思いましたが・・・デパレタイジングよりデパレタイズと呼ばれていることが多いように感じましたので、ここではデパレタイズとします。

※デパレタイズの逆で、ケースをパレットに積み付けるパレタイズのロボットもあります。ケース状態のものをパレットに積載して入庫する場合はデパレタイズ、パレット状態のものをケースにバラして入庫する場合はパレタイズを行います。同じメーカーが両方のロボットを提供していたり、技術的にも形状的にも共通項が多いと思われますが、混在して紹介するとややこしくなりそうですので、この記事ではデパレタイズに絞って説明したいと思います。入荷、出荷といった業務プロセス別に関連するロボットを紹介するのがわかりやすいかと思っていましたが・・・パレタイズとデパレタイズについては荷姿が変わる際に発生するため業務プロセスの設計によって随所で起こり得るため、特定のプロセスに寄せては扱いにくいですね。今回は割り切ってここでデパレタイズの紹介をし、パレタイズについてはおそらく出荷に絡めて別記事で紹介したいと思います。

デバンニングもデパレタイズも、従来は人手で段ボールケースを次々と移動させなければならない、労働負担の特に大きな業務です。特にデバンニングは短時間に集中して発生しがちな、いわゆるスポット的な業務ということもあり、人手不足が課題となりやすい物流センターの中でもとりわけ人材の確保が難しい領域で、逆に皆が苦手とするデバンニングを強化してサービス化しているアウトソーシング会社も存在するほどです。

デバンニングのアウトソーシング会社の例
DAIKEN
Mr.Devanning

本記事で紹介するロボットのリスト、リンク集

本文でより詳細に紹介しますが、最初にこの記事で紹介するロボットのリストを掲載します。リンク集としてもお役立ていただけると幸いです。今回はデバンニングとデパレタイズを対象としていますが、今後出荷や在庫管理に関わるロボットを紹介する際にこのリストを増強していき、より有用なリンク集となればと考えています。

物流ロボット一覧
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デバンニング物流ロボットの紹介

デバンニングで活用できるロボットを探して見つかったのは、本記事の執筆時点では川崎重工のVamboのみでした。この次に紹介するデパレタイズの領域では複数のメーカーがロボットを提供しており、デバンニングの方が選択肢が狭いようです。

Vambo(川崎重工)

Vamboは川崎重工が2022年2月にリリースしたデバンニングロボットです。ロボットアームとAGVを組み合わせた構成で、ロボットアームが荷物を掴んで動かし、AGVがロボット自体を移動させます。コンテナ内に自動で侵入してケースの荷降ろしを行います。

30kgまでのケースに対応しており、1時間に最大600ケースを荷降ろしするとされています。40フィートコンテナに140サイズのケース(W400×D600×H400)が500箱ほど入るとすると、最短1時間弱でこの荷降ろしが完了するという計算になります。先に挙げたデバンニングのアウトソーシング会社の価格例で、40フィートコンテナの料金が27,000円~30,000円とされていましたので、やや雑な試算とは思いますが、デバンニングロボットの生産性が高く発揮される場合は、このくらいの金額のコスト削減効果があると言えるのではないでしょうか。

同じサイズのケースが整然と並んでいるほど処理速度が速く、生産性は高くなるものと考えられます。ケースのサイズに違いがあったり、整然と積まれていない場合でも、3次元AIビジョンがケースのサイズの違いや傾きを認識してロボットアームの動きを制御して対応することができます。

複数のケースを一度に動かすこともできます。下部に掲載しているYoutubeの動画では、Vamboがコンテナから重なった2つのケースを同時に取り出して、コンベヤラインに置いた後(1:15あたり)、Vamboとは別のロボットが、重なった上のケースを一度持ち上げて、下にあったケースに並べています。この動画ではさらにこの後(1:55あたり)、別のロボットアームがケースのサイズを自動認識して、サイズ毎にパレタイズを行います。コンテナを開いてから荷降ろししてパレット積みするまでが全て自動化されるということです。この後パレット保管の自動倉庫に保管するか、自動フォークでパレットラックやネステナーに保管するかすれば、入荷・入庫の作業が一通り自動化されることになります。

Vamboはまだリリースされて間もないため、導入先の情報は見つけられていません。より詳しい機能や導入効果などできれば取材の機会を得て色々と伺ってみたいと思っています。

Vambo(川崎重工)の関連ホームページ

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20220224_1.html

Vambo(川崎重工)の関連動画

ロボット以外の、デバンニングアシスト機器も存在する

例えば村田機械のEL-De/VANがデバンニングアシスト機器としてリリースされています。リフター部分に作業者が乗ってコンテナを取り、付属するコンベヤ部分に流していくという仕組みです。こちらはニトリに導入された実績があるとのことです(※導入企業については、公開情報となっているもののみを記載しています。以降同じです)。

EL-De/VAN(村田機械)の関連ホームページ

https://logistics.muratec.net/jp/products/devanning/

EL-De/VAN(村田機械)の関連動画

デパレタイズ物流ロボットの紹介

個別のロボットの紹介をする前に、デパレタイズロボットの種類と、共通的な特徴を紹介します。既に複数のロボットが実用化されているだけに、仕組みや機能、性能も似通ってきている部分が多いようです。

アーム型と直交型の2種類

まずデパレタイズロボットの種類として、アーム型と直交型の2つがあります。アーム型の方が見慣れている方が多いのではないかと思います。1本のアームにいくつかの間接部分があり、関節を曲げ伸ばししながら物を取得して動かすというタイプです。

直交型は、アームが3つに分かれていて、それぞれ別の方向(左右、前後、上下の3方向)に動くようになっていて、それらが交差する形式です。文章の説明で見るとややわかりづらいかもしれません。UFOキャッチャーをイメージしていただくともう少しわかりやすいかと思います。アームの位置を左右に動かして、それから後ろ(奥)に進めていき、ストップしてから下に降ろして対象物を掴む、というのと同じ仕組みです。直交型の方がアーム型と比較して省スペースでの設置が可能と紹介されています。

直行型のデパレタイズロボット

出展:FAロボット.com

アーム型と直交型の比較として、この後で取り上げます東芝のホームページに非常にわかりやすい図がありましたので引用させていただきます。東芝が提供するのが直交型であるため直交型がハイライトされています。

直交型はケースに特化、省スペースで活用することができます。対してアーム型は、ケース以外の形状にも対応、段の高さが不揃いでも対応と、柔軟性が強みとなります。もうひとつ併記されている面デパレタイザーは、ロボットではありませんが、一緒に紹介させていただきます。こちらは同じサイズのケースが整然と段積みされたものを、段毎にまとめて取得しデパレタイズするというもので、柔軟性はありませんが処理能力が高いというマテハンになります。

デパレタイズロボットの比較表

デパレタイズロボットの比較表

出展:東芝ホームページ

デパレタイズロボットに共通する特徴
高度な画像認識・マスタレス導入・複数の荷姿への対応

現在提供されているデパレタイズロボットに共通的な特徴を挙げます。(後で紹介する全てのロボットに共通するわけではありません。どのロボットにどの程度当てはまるかは個別に説明することとします。)

  • 高度な3Dカメラを備えており、ケースのサイズや形状を高い精度で認識してアームをコントロールし、上手く取得するようになっています。単載(パレットに同じサイズ・形状のケースだけが積載されている)はもちろん、混載(パレットに様々なサイズ・形状のケースが混在して積載されている)にも対応します。
  • 商品マスタの情報が無い、いわゆるマスタレス、ティーチレスでの導入が可能になっています。これも高度な3Dカメラによるもので、商品情報が無くとも画像認識で情報を得ることができます。逆にここで得た情報をマスタとして登録できるというものもあります。
  • ケース以外にも、コンテナや袋物にも対応できるようになっています。

これを踏まえて、この後は個別のロボットを紹介していきます。

MujinRobotデパレタイザー(Mujin)

MujinRobotデパレタイザーはその名の通り、Mujinが提供するアーム型のデパレタイズロボットです。ロボットアームでは代表的なソリューションプロバイダーとしてMujinを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。導入実績が最多とされており、ホームページにも「世界No.1」「世界初」といったワードが並びます。

MujinRobotでパレタイザー

出展:Mujinホームページ

処理能力は、単載では最高1,000ケース/時間、混載では最高600ケース/時間のデパレタイズで、Mujinのホームページではこれが世界No.1の能力とされています。
高度な3Dビジョンシステムに加えて、荷物の取得をするハンドの種類が複数用意されており、ケース、袋物、コンテナの荷姿に対応することができます。混載にも対応します。

出展:Mujinホームページ

マスタレスで“超”多品種対応とされており、サイズや形状だけでなく、重量、模様、透明テープの有無や多角形、袋物など変形するものも識別します。ここでは簡易な紹介に留めますが、Mujinのホームページではもっと詳しい説明が掲載されており、そのトーンから品質への大きな自信が伺える内容となっています。ファンケル、ニチレイ、カインズといった企業に導入されています。

MujinRobotデパレタイザー(Mujin)の関連ホームページ

https://www.mujin.co.jp/solution/distribution/depalletize/

MujinRobotデパレタイザー(Mujin)の関連動画

デパレタイズ(京都ロボティクス)

京都ロボティクスは「デパレタイズ」というストレートな名称で2020年からデパレタイズロボットを提供しています。京都ロボティクスは2000年創業、3次元のビジョン技術を強みに展開しており、2021年4月に日立製作所のグループに加わっています。

デパレタイズロボットとして、アーム型と直交型の両方がラインナップされています。日立物流、パイロットインキ、ハマキョウレックスといった大手企業に導入されており、たしかな実績があると言えるのではないでしょうか。

アーム型

京都ロボティクス デパレタイズ アーム型

直交型

京都ロボティクス デパレタイズ 直行型

出展:京都ロボティクスホームページ

以下のように、デパレタイズロボットにおいて重要な機能を一通り満たしています。

  • マスタレス、ティーチレスで運用可能。逆に、ロボットが取り扱ったケースのサイズや重さを計測して、それをマスタ情報として返すことができる。
  • 複数の荷姿(ケース、コンテナ、袋物)に対応、混載に対応。

デパレタイズ(京都ロボティクス)の関連ホームページ

https://www.kyotorobotics.co.jp/depalletize-solution

デパレタイズ(京都ロボティクス)の関連動画

DE-PALLETIZER ROBOT(東芝)

東芝のDE-PALLETIZER ROBOTは直交型で、ボックスの形をしています。2018年8月から提供を開始しており、センコー、日立物流といった大手物流企業に導入事例があります。
次のような特徴を持ちます。
・2.2×3.4mの省スペースで設置可能。
・マスタレス、ティーチレスで導入可能。
・処理速度は最高600ケース/時間。先に挙げたMujinと同等。

DE-PALLETIZER ROBOT(東芝)の関連ホームページ

https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/security-automation/robotics-logistics/product/de-palletizer.html

DE-PALLETIZER ROBOT(東芝)の関連動画

フェイスデパレタイザ(不二技研工業)

ロボットではないが、先の比較表で面デパレタイザとして挙げられていたタイプの例を挙げます。不二技研工業のフェイスデパレタイザです。フェイス=面ということですね。

こちらはロボット型のデパレタイザと比較するとやや大がかりなマテハンになります。不二技研工業のホームページから引用させていただいた図の通り、同じサイズの段ボールが整然と積み付けられた状態から、1段ずつ取得し、スクレーバーと呼ばれる板に載せてデパレタイズしていくという仕組みです。

デパレタイズ動作の流れ

出展:不二技研工業ホームページ

おまけ Stretch(Boston Dynamics)

最後におまけとして、Boston Dynamicsを取り上げます。Boston Dynamicsは、Spotという、四足歩行して、階段も上り下りしたり非常に柔軟な動きをする動物型のロボットや、Atlasという人型の、歩くだけでなくジャンプしたりバク宙、パルクールまでできるロボットで知られる、アメリカのハイテク企業です。ロボットの動画を観られたことがある方も多いのではないでしょうか。

動物型ロボット Spot

人型ロボット Atlas

このBoston Dynamicsも、産業用ロボットとしてデパレタイズ、デバンニングで活用できるロボットを発表しているため紹介したいと思います。おまけというのは、おそらく日本でまだ正式に販売されていないように思われるためです。

Stretchというロボットが、2021年3月に紹介され、2022年から販売を開始しています。2022年の販売分はすぐに売り切れてしまったそうです。

Youtubeの動画がわかりやすいためご覧いただければと思います。AGVの上にロボットアームが搭載された形状です。この動画ではケースはパレットに載せられていませんが、ケースを取得して動かす部分(0:03)はデパレタイズ機能に該当します。ケースを取得し、コンテナでも袋でもない、異形物と言えるロボット(Spot)も同じアームで取得しています(0:14)。そして同じロボットが、コンテナに侵入してデバンニングも行います(1:00)。

Stretch


今回ご紹介するロボットは以上となります。次回以降、出荷や在庫管理等で用いられるロボットについて考察し紹介していきたいと思います。多種多様なロボットがあるため、なるだけわかりやすい構成になるよう企画します。

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