BEAMS事例 ACR「HaiPick」のリアルな活用状況インタビュー ~物流現場で見えてきた自動倉庫型ロボットの運用実感~

  • 2026年9月8日

アパレル大手のBEAMSが2024年にACR(Automated Case-handling Robot)「HaiPick」を導入してから2年近くが経過しています。自動倉庫タイプの物流ロボットは近年のトレンドであり導入事例が増えていますが、ニュースや記事になるのは導入してすぐのタイミングがほとんどです。それに対して今回の記事は、2年近くが経過したからこそのリアルな活用状況を、BEAMSの現場にて取材した内容です。これからロボットの導入を検討される企業にとってヒントになる内容が豊富ですのでぜひご覧ください!

ACRについての詳しい情報として、以前の特集記事もあわせてご覧ください。

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トラロジでは、物流倉庫で利用される最新のロボットに大注目して独自に情報収集しています。今回は、ACRという物流ロボットについての特集です。保管・出荷の領域で高い生産性と保管効率を両立する、新しいタイプの物流ロボットとして期待の高いものです。[…]

ACRを活用する倉庫のイメージ

 

インタビューにご協力くださった幡野 広樹さん

BEAMSのご担当者として、幡野さんにインタビューをさせていただきました。

株式会社ビームスホールディングス
ロジスティクス本部 戦略部 戦略1課 課長
幡野 広樹さん

株式会社ビームスホールディングス
ロジスティクス本部 戦略部 戦略1課 課長
幡野 広樹さん
HaiRoboticsのACR「HaiPick」と共に

「BEAMSのロゴが入ったHaiPickと一緒に映ってほしい!」とお願いをしてこの写真を撮らせていただきました。HaiPickが動き回るのでなかなかよい写真が撮れず😅、幡野さんにもあちこちと動き回っていただき🏃‍♂️🏃‍♂️‍➡️🏃‍♂️🏃‍♂️‍➡️何回も撮り直してようやくこの写真が撮れました(幡野さん、ありがとうございました!🙇‍♂️)。

肩書の通り、BEAMSグループのロジスティクス戦略全般を担当されており、物流センターの設計からWMS等のシステム関係、国際物流、さらに物流不動産まで、非常に広い範囲をカバーされています。

なおこのインタビューおよびHaiPickが稼働する様子は、以下のYoutube動画でも紹介されています。合わせてご覧ください!(内容の説明自体は、この記事にてより詳しくさせていただいています😃)

「ビームス ウエアステーション」の概要

拠点情報

名称「ビームス ウエアステーション」
「DPL江東深川」に入居。豊洲駅から徒歩15分くらいとかなり立地がよかったです。人が集まりそう!
床面積約9,000坪(4フロア合計)
2024年9月下旬から全面稼働

主な業務内容

店舗配送、EC配送に加えて、輸出用の荷物(台湾などの海外にある店舗向けや、海外で行われるポップアップ企画用)も取り扱われています。
国内に2拠点ある内の1つで、ビームス ウエアステーションは関東拠点という位置付け。東日本の店舗を優先して在庫の引当が掛かるが、西日本の店舗に必要な在庫がビームス ウエアステーションだけにある場合はここから出荷されます。そのため、エリアとしてのカバー範囲は全国になります。
アパレル物流に付随するささげ業務(撮影、採寸、原稿)の内、撮影と採寸がビームス ウエアステーションで行われます。原稿作成は本社で行われています。
カスタマーサポートもビームス ウエアステーション内で行われています。

荷物の内容

洋服をメインに、アクセサリー、雑貨、家具など。「BEAMS JAPAN」(※)で取り扱っている食品やお酒もあります。
※日本の良さや面白さを国内外へ発信する事業で、日本各地の名品をはじめ様々なアイテムを紹介している
SKUは75,000くらい。
在庫ピース数は120~130万くらい。

大まかな業務の流れ

ビームス ウエアステーションでは店舗向け、EC向けといった区別をせずに商品の在庫が一元管理されています。
入荷時、商品の荷姿やサイズ、形状に応じて在庫の保管先が選択されます。HaiPickシステム、ラック、ネステナー、Zラック等に分けて保管されます。
出荷時は各保管先から商品をピッキングして、それがピースソーターに集められ、店舗別や配送先別に仕分けされます。その後、EC出荷分の商品は自動梱包機により梱包されて出荷されます。

ACR「HaiPick」の導入概要

  • ACR「HaiPick」 57台。2026年時点で国内の導入事例で最大の台数です。
  • コンテナを保管するラックは高さ4.7メートル。
  • ラックに保管するバケット(コンテナ)は32,500個(=ロケーション)
  • HAI PORT Workstation(※)が4セット
  • ピッキングステーションは6ヶ所

※HaiPickとの間で複数のコンテナを一括で受け渡しして前後工程と連携する

BEAMSの倉庫でHaiPickが稼働する様子。バケットが保管されたラックの高さは4.7メートル

ACR「HaiPick」利用の流れ

入荷

入荷した荷物を開梱して、RFIDを使って検品しながらHaiPickシステムのバケット(コンテナ)に格納します。入荷検品と入庫が同時に行われます。
そして、バケットをコンベアに載せます。これ以降、人による作業は一切ありません。コンベアと垂直搬送機がバケットをHaiPickのあるフロアまで自動で搬送し、HAI PORT Workstationに受け渡します。
HaiPickがHAI PORT Workstationからバケットを受け取り、保管スペースまで移動してラックにバケットを格納します。これで入荷が完了します。

出荷

HaiPickが出荷対象の商品が格納されたバケットをラックから取得し、それをHAI PORT Workstationに格納します。
HAI PORT Workstationに格納されたバケットはそこからコンベアに載り、ピッキングステーション兼ソーターのインダクション(投入口)まで運搬されます。
作業者が画面に表示される指示に従ってバケットから商品をピッキングして、ピースソーターへ投入します。人が行う作業はこれだけです。
ピースソーターで店舗別やECの配送先別に商品が自動で仕分けられます。作業者がピッキングする際に店舗向けやEC向けであることを意識する必要はありません。

なるべく沢山の荷物をHaiPickに入れたい!

ここからはビームスホールディングスの幡野 広樹さんへのインタビュー形式でお届けします。

株式会社ビームスホールディングス
ロジスティクス本部 戦略部 戦略1課 課長
幡野 広樹さん
インタビューに応えてくださっている様子

 

 
トラロジ
HaiPickの利用範囲を教えていただけますか?
幡野さん
バケットへの格納に適した商品であれば、なるべくHaiPickを利用するようにしています。HaiPickに適さないのは、ハンガーに掛ける物、シューズ、割れ物、アクセサリーなどです。シューズはサイズによってはバケットに2箱しか入らないため効率がよくないですし、アクセサリーは小さ過ぎてバケットがスカスカになってしまいます。

主力であるアパレル商品はバケットでの保管効率が高いのでHaiPickに適しています。出荷を続けていると、バケット当たりの充填率が下がってくるため、同じバケットに3~4SKUの混載を許容しています。
 
トラロジ
SKUが混在するのですね。ピッキングの間違いを防ぐために、何か工夫などされていますか?
幡野さん
RFIDのスキャナで検品するのでまず間違えることはありませんが、その他にも、入庫の際に同じバケットに類似のカラーやサイズの混載があると警告が出るようになっていて、ピッキングの時は画面に対象商品の商品画像や色見本が表示されて間違いが起きにくいように配慮されています。
 
トラロジ
ミスが起きないための仕掛けが何重にも施されているのですね👍

HaiPickをなるべく広い範囲で使いたいという大きな理由は何でしょうか?生産性が高いというのはおそらくあるのでしょうが、なるべく広くということは、管理面のメリットなどもあるのでしょうか?

幡野さん
最大の理由はやはり、生産性の向上ですね。そのメリットを最大限に活かすためにHaiPickを沢山使いたいと思っています。

HaiPickの導入により生産性と保管効率が大幅に向上

【Before】ラックに保管された荷物を人海戦術でピッキング

 
 
トラロジ
なるほど、それほど大きな効果があったということですね。どのくらい生産性が高くなったのか、具体的に教えていただけますか?移転前の拠点でHaiPick無しの運用をされていた時と、Before-Afterで比較していただけるとわかりやすいかと思います。
幡野さん

わかりました。まず、今HaiPickに格納しているような商品は、以前のセンターでは一般的なスチールラックに格納していました。ロケはフリーロケーションです。弊社は特に少量多品種で、1SKUあたりの在庫点数が少ないので、通常のラック等に保管すると保管スペースが広くなってしまいやすいです。

ピッキングカートを使って歩行してピッキングしていたのですが、歩行距離はかなり長かったと思います。店舗向けとEC向けで在庫の管理自体は統合されていたのですが、ピッキングの指示については店舗向けとEC向けとで分かれて出ていたので、同じ商品でも複数回ピッキングに行かなければならなかったという事情もありました

生産性としては、1人1時間あたりにピッキングできるピース数が秋冬(商品が大きいため数を捌きにくい)であれば80、春夏であれば120くらいでした。

例えば午前中に3,000ピースのピッキングをしなければならなかったとします。EC出荷であれば2時間くらいで完了させたいので、20名から、安全を見るなら25名の作業員を投入して完了させていました。

【After①】出荷に必要な人数が7割減、センター全体でも3割減

幡野さん
現在のHaiPickを利用した運用ですと、ピッキングステーションが6ヶ所しかないので作業員は6人までになります。HaiPickの能力として1時間あたり1,500パケットを排出できる設計にしていて、実際その通りの能力を発揮しています。3,000ピースを(Beforeと)同じ2時間で、6名の体制でやり切ることができています。20名だったのが6名と、7割もの工数を削減することができています。
 
 
トラロジ
7割減というのはものすごい効果ですね😮
幡野さん
出荷工程では特に大きな効果が出ました。センター全体として考えても、これはHaiPickだけでなく様々な設備を導入した総合的な効果ですが、従来の運用であればおそらく120人くらいは要する所を、80から90人程度の体制で上手く運用することができています。
 
 
トラロジ
全体としても3割ほどの削減ができているのですね。

【After②】保管効率は1.8倍に

幡野さん
さらにHaiPickの導入効果は保管効率にも現れていますね。4.7メートルの高さを活かせるので、従来のラックを利用した保管と比較すると、保管効率は1.8倍くらいになりました。
 
 
トラロジ
ラックですと高さは2メートルくらいですもんね。

先ほど、HaiPickが導入時に設計した通りの能力をしっかり出せているというお話がありました。最近よく耳にする論調として、物流ロボットは規模の変更が容易だし、使いながら上手く能力が出るようになれば規模を拡大していこう、というのがあると思っています。貴社は特にそのようなスタンスはお持ちではなかったですか?
幡野さん

そうですね、最初からHaiPickを広く使おうと計画していて、その予定通りに推移しています。HaiPickの後工程がソーターですが、その作業者の手元には常にバケットが供給され続けており、待ち状態になることがありません。安定して高い能力を発揮することができています。

 
 
トラロジ
要件定義や設計を綿密にされていたからこそですね👍

    作業負担が軽減し、年齢性別等に関係なく働きやすい職場に

     
    トラロジ
    生産性と保管効率の他に、HaiPickの導入によって大きく変わったことは何かありますか?
    幡野さん
    人が行う作業について、作業負担をかなり軽減できていると思います。

    以前、特に負荷が高かったのが入荷・入庫の作業です。重い段ボールを台車に載せて、保管エリアまで歩いて押して行き、それをまたラックに収納しなければなりませんでした。今は、商品を検品しながらバケットに投入して、それをコンベアに載せるだけで、後は垂直搬送機を経由してHaiPickに入庫されるまで自動で行われます。

    年齢や性別に関係なく様々な方が働ける環境を目指していて、それに近づくことができたなと感じています。人材の定着率もよいですね。

     
    トラロジ
    こちらのセンターは立地がよくて、駅も住宅街も近いですよね。環境もよいとなると、それは人が定着しますね👍

    投資対効果はいかに・・・?

     
    トラロジ
    導入から時間が経過しているからこその質問なのですが・・・投資対効果って、どのような状況ですか?もちろん、具体的な金額などは非公開だと思いますが。
    幡野さん
    はい、金額の話はできないです(笑)。お話できるとすれば・・・そうですね、投資回収の期間ですかね。7年で投資回収をする計画でスタートしていて、その2年目としては順調に推移していると思います。
     
    トラロジ
    ありがとうございます!効果測定がしっかり出来ているという点も素晴らしいですね。

    今後やりたいこと!HaiPickの更なる利用拡大やデータ活用など

     
    トラロジ
    センターをもっともっとよくして行くために、今後もっとこんなことがやりたい、という展望などはお持ちですか?
    幡野さん
    HaiPickについてはまだ試行錯誤している部分もありまして、できれば更に適用範囲を広げられないかと考えています。例えば、店舗から戻ってきた商品をどうするか、とかですね。店舗から戻ったらなるべく早くそのデータを登録して販売可能なステータスにしたいので、今はそれをすぐにできることを優先して通常の保管ロケに登録しているんです。SKU仕分をしてHaiPickに登録して販売可能するまでの時間を許容できるのかということと、SKU仕分をしない場合でも返品はSKUがかなりバラつくので、それがHaipickにフィットするのかなという点を検討しているところです。
     
    トラロジ
    HaiPickにまとめた方が管理上はよいしシンプルだけど、最速ではなくなってしまうということですね。たしかに悩ましいですね🤔
    幡野さん

    HaiPickの機能として、夜間に在庫の配置を最適化したり翌日の出荷準備を進められるポテンシャルがあるのですが、情報システム側がまだ整備できていなくてそれを活用できていません。店舗が前日に売り上げた分を翌日に補充するという出荷パターンが多いのですが、そのデータが作成されるのが当日の朝なので夜間を活かせないのです。これは今後ぜひやりたいですね。

     
    トラロジ
    夜間を活用できたらさらに生産性が上がりそうですね!👍
    幡野さん
    もうひとつやりたいのが、これもマテハン、ロボットに加えて情報システムが関係するのですが、データの活用、データドリブンの状況把握や意思決定支援です。マテハン、ロボットのカバー範囲が広がったので様々なデータが取れるようになったので、次はこれをもっと活用して行きたいですね。データから考察を得て人の判断を助けていく、そんな使い方ができればいいなと思っています。
       
      トラロジ
      実行系の仕組みが充実した後に情報系の活用を進められていくということですね🙂‍↕️

      ところで、西日本にあるもうひとつのセンターに、このセンターで成果のあった仕組みを応用していくような計画はあるのですか?その逆もあるのかなと思いますが。
      幡野さん
      西日本についても人材の確保が難しくなっているなど、こちらと同様の課題感はあるので、効率化や負担軽減に資するソリューションは取り入れて行くことになるはずです。ただ、例えば西日本はアウトレットの割合が高くて、SKUあたりの在庫点数が多い、というように、特徴の異なる部分があります。特徴に合った最適なソリューションを選択することになると思います。
       
      トラロジ
      なるほど、そういった違いがあるのですね。であれば単純に応用することがよいとは言えなさそうですね🙂‍↕️

      これで、私がお伺いしたかったことは一通り聞くことができました。色々とお話ししていただき、ありがとうございました!
      幡野さん
      こちらこそありがとうございました!

      取材後記

      以上、BEAMSにて自動倉庫タイプの物流ロボット「HaiPick」を活用されている事例の取材でした。HaiPickの導入事例としては最大の規模だそうで、ラックが林立しその間を沢山のロボットが動き回って荷物を捌いていく様子は壮観でした!
      自動化ソリューションの導入後、しばらく経過してから突っ込んだ話を聞かせていただける機会としても貴重でした。出荷業務で7割の工数削減、保管効率は1.8倍ととても順調に効果が出ているそうで、何よりです👍今後、人出不足はもっともっと深刻になっていくリスクが高いため、このような成功事例が普及し増えてほしく、沢山の皆様に参考にしていただけますと幸いです。
      ところで・・・さすがBEAMS、置いてある椅子やソファ、それに仕事されている方々が、なんだかお洒落でした!快適に、とても働きやすそうな職場でした🤩

        ビームスのロジスティクス本部 戦略部 戦略1課 課長 幡野 広樹さんにインタビュー
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