2021年以降頃から、ピッキング用搬送ロボット(※)の一種であるピッキングアシストAMR(Autonomous Mobile Robot=自律走行搬送ロボット)の導入事例が増えています。
※「ピッキング用搬送ロボット」は、トラロジ独自の調査と考察に基づいて試みたロボットの分類の1つです。様々な種類の物流ロボットを整理・分類した記事はこちらをご覧ください。
[最新の更新内容]ソリューションの比較表を更新しました。 -------------------------------------------------------------- 前回の記事では物流ロボットの内、入荷(デバン[…]
先日の記事では、物流領域におけるこのピッキングアシストAMRというソリューションの内容を概観し、そのメリットについて掘り下げました。
トラロジでは、物流DXで注目されるソリューションのひとつである物流ロボットについて様々取り上げています。今回は物流ロボットの一種である「ピッキングアシストAMR」を特集する記事です。他のロボットソリューションと比較してより小さな投資で、生産[…]
今回はピッキングアシストAMRで国内シェアNo.1のラピュタロボティクス社に、その強みや今後の展望などを様々インタビューし、さらにAMRについての理解を深めたいと思います。ラピュタロボティクスのピッキングアシストAMRについて次のような内容を幅広く、そして深く伺っています。
・技術や機能の面で具体的にどのような強みがあるのか
・ソリューションとして何が優れているのか
・AMRの導入にあたってのプログラムの在り方
・カスタマーサクセスの内容など、ソリューションの導入効果をより確実なものにするための取り組み内容
ラピュタロボティクスのホームページ
https://www.rapyuta-robotics.com/ja/
ラピュタロボティクス「PA-AMR」のプロモーション動画
今回の特集ではラピュタロボティクスの森 亮さん(ラピュタロボティクス株式会社 執行役員 ビジネス統轄)に、インタビューにご協力いただきました。
インタビュー開始!
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物流展のラピュタロボティクス社ブースの様子
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
新しく発表された「PA-AMR XL」
国際物流総合展での「PA-AMR XL」展示の様子
PA-AMR XLの紹介ページ
https://www.rapyuta-robotics.com/ja/solutions-pa-amr-xl
ラピュタロボティクスの何が凄い?シェアNo.1で、全てのユーザーが継続利用中。まずはこの実績そのものが一番の説得力に
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公表している導入事例としては、日本通運様に15台、佐川グローバルロジスティクス様の柏センターに11台、同堺センターに13台、京葉流通倉庫様に30台、アスクル様に34台導入しています。他にも10社以上の導入実績があり、2022年の最近では1ヶ月に2、3件くらいのペースで成約案件が発生しています。
AMRのメリットとラピュタの強み① 業務の生産性向上
「群制御」が生産性向上のカギ。群制御がないのは、「指揮者のいないオーケストラ」😱と同じ
まずはこの中の①「業務の生産性が上がる」に関連するような強みについてお聞かせいただけますか。
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群制御があることで、全てのロボットが同じ地図を共有して、お互いの位置を把握し、走行ルートを譲り合ったり、ピッキングの順番を調整したりできるので、スムーズで効率的な動きが実現されます。作業の進捗状況もリアルタイムに管理して、ロボットおよび人のリソースを最適に活用して最短時間で作業を終えられるよう、AIが作業の割り当てや順番をコントロールしていきます。もし群制御が無ければ、それぞれのロボットが単純に自身の仕事だけを進めようとするため、ルートが重なってスタックしてしまったり、同じ場所にロボットが集中したりして、生産性を低下させてしまうことになります。
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最小通路幅90cm、ピッキング順序のサジェストといったきめ細かな機能が生産性向上に貢献
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AMRが走行するラック間の最小の通路幅を、90cm(AMRが一方通行する場合。すれ違う場合は150cm)と出来ている点も特長かと思います。AMRがそのサイズ(オリコンの搭載:50リットル×2もしくは10リットル×4)も考慮して、移動の効率を損なわないギリギリの設定としています。これより狭くすることも可能ではあるのですが、AMRの移動効率が下がってしまい逆にバランスが悪くなりかねないため、90cmが最適と判断しています。90cmであれば、一般的な棚の設置レイアウトとそう大きく変わるものではないと思います。新しくリリースしたPA-AMR XLも、従来より大きなサイズですが、通路幅は30cmだけ増えて120cmで運用できるようにする計画です。
それから、細かいですが痒いところに手が届くとして好評なのが、AMRがピッキング順序をサジェストする機能で、「ピッカーガイダンス」機能というものです。ある1台の、ピッキング待ちのAMRについてピッキングを終えた後、そのAMRが、作業者は次にどのロケーションへ(どのAMRの所へ)移動するのがよいかというサジェスチョンを表示してくれます。ピッキング待ちで止まっているAMRであればどれでも作業対象にはできるのですが、全体の状況と生産性を考慮して、その中でも最もよいものをピンポイントで教えてガイドしてくれるという機能です。作業者の移動と作業順序に無駄が無くなり、更に生産性が向上します。
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AMRのメリットとラピュタの強み② 業務マネジメントの精度向上
充実のダッシュボードでAMRを活用した業務運用を管理
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②-1 業務の進捗や生産性をリアルタイムに、わかりやすく把握できる
②-2 波動対応に強くなる
②-3 データに基づく継続的な改善をしやすくなる
ダッシュボード画面を提供しており、ここでリアルタイムに業務の進捗状況や生産性、ロボットの稼働状況や配置など、AMRを活用した業務運用を管理するために必要な情報を一通り確認することができるようになっています。ダッシュボードで業務の遅れや何らかのエラーに気づいたら、管理者は必要な対策を判断して実施することができます。
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業務量の波動に合わせたAMRの短期レンタルサービスも提供
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AMRを導入されるお客様の多くは、繁忙期ではなく通常時の業務量に合わせて、その業務量を高い生産性でこなせるようAMRの台数を設定されています。例えば従来は20名で行っていた業務をAMR導入後は10名で回せるようになる、そのような効果があります。
ただし、業務量が増える繁忙期にはAMRの台数が足りなくなってしまうので、その分は作業員を増員して対応しなければなりません。この増員を軽減して繁忙期をも楽に乗り切ろうというのが、短期レンタルサービスの狙いです。そのままだと10名の増員が必要だったのが、AMRを短期レンタルできることで5名で済む、というような対応ができるようになります。業務量の繁閑に合わせて利用するAMRの数を調整していただいて、AMR導入の効果を更に大きくしていただきたいと考えています。
AMRのメリットとラピュタの強み③ 作業員の負担軽減
AMRを使えば作業員の仕事が本当に簡単で楽になる。しかも安全性にも死角なし!
③-1 台車を押して長い距離を移動しなくてよい
③-2 手ぶらで作業ができる
③-3 難しいことを覚える必要がなく簡単に作業ができる
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そうですね、作業の簡単さ、楽さについては、お客様からの貴重な意見も多数いただきながら根気強く改善を重ねてきた甲斐もあり、現在は多くのお客様にご満足いただける仕上がりになっていると思います。AMRを使う業務に慣れてしまうと、もう元の、ハンディや手押し台車を使うような業務には戻れない、という嬉しいような、一方でちょっと怖いような声も耳にします😅。生産性も向上するため、簡単で楽な仕事が、しかも早く終わります。心身共にストレスが軽減されて、職場環境が良好に感じられ、前向きな改善のための活動が誘発されてくるなど、思った以上によい影響が生まれてくるようです。
その上で、もう1つラピュタロボティクスの強みと考えているのが安全性の高さです。サービス提供開始から今まで2年半の間、事故は一件も起きていません。それだけ十分な安全対策の機能を備えています。周囲の人や障害物を認識するための高性能なカメラを2つ、そしてLiDARセンサ(LiDAR=Light Detection And Ranging 光を照射して対象物とその距離を測定する)を2つ搭載しており、周囲および高い所から低い所まで全ての状況を、死角なく捉えて把握します。人や障害物が近づけば確実に止まり、ぶつからないルートを探して迂回するようになっています。
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費用対効果を保証してAMR導入のハードルをぐっと下げる、安心のプログラムを提供
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1つ目は、AMRの導入にあたってお客様側に存在するリスク、要は導入効果が得られないかもしれないという不確実性を抑制することを目的とした導入プログラムの提供です。
2022年6月からAMRのサブスク利用について「費用対効果保証プログラム」の提供を開始しました。ほとんどのお客様は初めてAMRを導入されます。導入効果への期待は大きいが、本当に上手く効果が出るかどうか不安もまた大きい。この不安を解消することを目的としています。AMRの導入前に導入内容や効果について詳細なシミュレーションをした上で、目標とする生産性を設定します。導入後、もしこの目標を達成できなかった場合はその分、AMRのサブスク料金が減額されます。そのためお客様は、目標の生産性にさえご納得いただければ安心してAMRの利用を開始していただけることになります。
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お客様を確実な成功に導く、徹底したカスタマーサクセス
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カスタマーサクセスのチームが各お客様に密着して、確実に、かつ早く導入効果を上げられるよう現場にソリューションをフィットさせ、定着させていきます。当社を選択していただいたお客様からは、このカスタマーサクセスの面で海外発のソリューションよりも安心感がある、という声をいただくことが多いです。
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そして四半期毎に1回、お客様と当社の合同で大規模なレビュー会を行い、その四半期の総括を行うと共に、それ以降の目標設定や活動計画を共有します。
こういったコミュニケーションの中で、当社は常にプロアクティブに改善提案を行っていくスタイルを徹底しています。受け身になってお客様から課題を提示されるのではなく、こちらからお客様の課題を抽出し、お互いに必要な変化を促していきます。このスタイルを貫き通すためには、ソリューションの内容を改善し続けられる技術力はもちろんですが、お客様に引けを取らないレベルで物流業務に精通していることも求められます。当社のカスタマーサクセスチームには物流業務に詳しいメンバーも揃っており、お客様の業務プロセスもよく理解した上で、AMRの最適な活用方法を提案していきます。

カスタマーサクセスを通して集まるお客様の声が、ソリューションの進化を加速
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カスタマーサクセスに注力しているので、お客様からのフィードバックが本当に沢山集まってきます。この中から、特定のお客様に限らずどこでもメリットがあると考えらえる内容を優先してソリューションに反映していっています。例えば以下の機能やサービスは、お客様の声をきっかけに生まれたものですね。
・ピッカーガイダンスシステム。AMRが次のピッキングロケーションをサジェストする機能。
・折り畳みコンテナに加えて、段ボールの搭載にも対応。
・防火シャッター連携。防火アラームが鳴ると、防火シャッターの下にAMRがいることがないよう自動的に移動させる。防火アラームのシグナルとAMRの制御を連携することで実現。
・作業者個人毎の生産性をトラックしダッシュボードに表示する機能。
個別のお客様のご要望に手厚い対応をすることを通して、ソリューションを進化させることができます。それが他のお客様に対してもより品質の高いソリューションを提供することにつながるという好循環が生まれています。
ラピュタロボティクス社の今後の展望
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ラピュタロボティクスは、ロボットソリューションを提供するだけでなく、ロボットをより効果的に、効率的に活用するためのプラットフォーム(複数台のロボットを効果的に動かすための頭脳のようなもの)の提供を目指しています。当社自身が提供するロボットのラインナップが増えると、それらのロボット同士がスムーズに連携しつつ、対応できる業務プロセスや荷物の種類が広がります。さらに、他社製のロボットやマテハンにも対応して、それらも連携させることができるようになっていきます。同じプラットフォーム、いわば同じ頭脳で全てのロボットやマテハンを最適に連携させて、生産性の高い業務プロセスを容易に構築することができる、このような姿に近づいていきます。
編集後記
ラピュタロボティクスの森さんに、お忙しい中でかなりこってりとお話をうかがうことができて大変ありがたかったです。AMRについて、技術面で優れたソリューションであることはもちろんですが、それを業務にフィットさせていくカスタマーサクセスであったり、成果報酬型の導入プログラムであったりと、打ち手が本当に豊富で、組織としての充実ぶりを感じます。森さん以外にもラピュタロボティクスの方々にお会いしてお話していますが、皆さん、なんというかシュっとしてて優秀そう、なんですが、成果にコミットされている熱量も感じさせる、素敵な方々がそろっているという印象です!
AMRもそうですし、様々なロボットやマテハンが簡単に効率的に連携するというビジョンとなると更に、今後もっともっと成長するマーケットなので、その中でラピュタロボティクスさんがどう展開されていくか楽しみです。
また、アメリカへの進出も興味深いですね。(アメリカの物流現場の実情を詳しくは知らないんですが・・・😑おそらく)より緻密であろう日本で育ったソリューションは、アメリカではもっと大きな効果を発揮するかもしれません。人件費もアメリカの方が高いので、その意味でも効果が大きそうですね。アメリカでのご活躍もお祈りしたいと思います。