三井物産グローバルロジスティクス(MGL)は7月9日、千葉県内の物流センターにQuicktron製「QuickBinインテリジェントロボットソリューション」の2例目を導入したと発表しました。今回の導入では、Bin(コンテナ)搬送を担う子機(AGV)に最新型の「M5F」を採用し、従来機と比較してAGV台数を約25%削減することに成功しました。
QuickBinソリューションの技術的優位性
トラロジでは、QuickTronの公式資料と三井物産GLの導入事例を基に、QuickBinソリューションの技術的特徴と優位性を整理しました。
1. システム全体構成
QuickBinは「親機(昇降ロボット)」「子機(AGV)」「作業ステーション」の3要素で構成される自動ケースハンドリングロボット(ACR)システムです。親機が棚からBin(コンテナ)を取り出し、子機がステーションまで搬送することで、保管・ピッキングを高速かつ省人化できます。
2. 親機(昇降ロボット)の性能
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垂直スペースの最大活用
親機は最大10 m級の棚を上下に移動し、上層部までBinを取り出せるため、床面積当たりの保管容量が大幅に向上します。 -
高精度ピッキング機構
独自の把持ユニットにより、コンテナを±2 mmの精度で着脱。従来のロボットアーム方式に比べて取り出し時間を短縮し、位置ズレによる停止リスクを低減します。
3. 子機(AGV)の搬送性能
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最新型M5Fの高速搬送
最高速度4.5 m/sと11 時間バッテリーにより、1シフト(8 時間)を中間充電なしで走行可能。これにより同一スループットで約25%の台数削減が見込めます。 -
カーブターン機能
QR+慣性ナビゲーションを組み合わせ、曲線経路でも一時停止せず滑らかに走行。狭小通路でも渋滞を起こしにくく、倉庫レイアウトの自由度が高まります。
水平展開による運用拡大—1例目との違い
2023年9月に日本初導入された1例目は、単一荷主・店舗向け出荷(DC)のみの運用でした。しかし今回の2例目では、MGLとして初めて複数荷主を取り扱い、EC(電子商取引)、卸など複数の出荷形態に対応する設計となっています。
この水平展開は、1例目で蓄積した運用ノウハウを活かし、より複雑な物流要件に対応する重要なステップといえます。別業務・別商材への適用により、QuickBinソリューションの汎用性と拡張性が実証された形です。
物流業界の人手不足解決への貢献
物流業界では深刻な人手不足が続く中、MGLのような大手物流企業による積極的な自動化投資は業界全体への波及効果が期待されます。
MGLは今後、通常のBinに格納できない大型商品やハンガー商品の自動化に向けて、GTP棚搬送ソリューションとの並行運用も検討しています。これにより、さらなる自動化範囲の拡大が見込まれます。
今後の展開と業界への影響
MGLでは「引き続き様々な自動化技術の検証実験・導入を積極的に推進し、物流品質の維持と作業効率の更なる向上を目指す」としており、今回の成功事例が他拠点での自動化の取り組みも加速させる可能性が高いです。
Quicktronは日本市場でのプレゼンス拡大を図っており、エクシークとの提携による国内初のラボ開設など、日本での事業基盤強化を進めています。今回のMGLでの成功事例は、日本の物流業界におけるQuickBinソリューションの普及を後押しする重要な実績となりそうです。
関連リンク
製品・技術情報
– Quicktron Japan 公式サイト
– QuickBin SmartPick ソリューション詳細
– エクシークのフルフィルメントセンター(MFLP船橋Ⅲ)に国内初となるQuicktronラボを併設
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