アマゾン/複数アーム統合型ロボット「Blue Jay」がピッキング・格納・集約を1か所で完結

  • 2025年11月9日
Amazon Blue Jayアーム
出展:Amazon

アマゾンが新しい物流ロボット「Blue Jay(ブルージェイ)」を発表しました。天井に設置されたコンベア状のトラックから複数のロボットアームが吊り下げられ、それらのアームを連携させて、ピッキング・格納・集約という3つの作業を1つのワークスペースで同時に実行する革新的なシステムです。アマゾンは、これらのアームの動きを「絶対にボールを落とさないジャグラー」のようであり、また複数のアームが「オーケストラの指揮者」がいるように調和して動いている、と例えています🤹

3つの区画を1つに統合、作業員の負担も軽減

Blue Jay operates like a juggler
出展:Amazon

従来アマゾンの物流センターでは、ピッキング、格納(stow)、集約/梱包(consolidate)という3つの作業を、それぞれ別のロボットステーションで行っていました。Blue Jayはこれらを1つのワークスペースに統合しました。複数のロボットアームが協調動作しながら、リアルタイムで最適な動きを判断して作業を進めます。

同じ処理能力をより少ない物理スペースで実現できるため、施設全体の効率が大幅に向上することになります📦
現在、Blue Jayは現在テスト導入されているサウスカロライナ州の倉庫に保管されている全アイテムの約75%に対応しています。将来的にはアマゾンの即日配送サービス「Same-Dayデリバリー」を支える中核技術のひとつになりそうです。

デジタルツインで開発期間を3分の1に短縮

開発期間3年から1年へ、驚異的なスピード感

従来、Robin(ピッキングロボット)やCardinal(積み付け・積み降ろしロボット)、Sparrow(ピッキングロボット)といったアマゾンのロボットは、開発に3年以上を要していました。しかしBlue Jayは、コンセプト開発から本番導入までの期間がわずか1年強程度という驚異的なスピードで実現されました⚡

この短縮を可能にしたのが、デジタルツイン技術です。実際の物理法則を反映した高度なシミュレーション環境で、何十ものプロトタイプを仮想的に試作・検証できるようになりました。アマゾンはNVIDIAの「Omniverse」や「Isaac Sim」といったプラットフォームを活用し、ロボットの動作学習や施設レイアウトの最適化を仮想空間で完結させています。すごい時代になりましたね👏

既存ロボット群の知見を活用

Blue Jayの開発には、アマゾンが世界中で運用する100万台以上のロボットから蓄積されたAI、データ、学習経験が活かされています。既存のProteus(棚搬送ロボット)やSparrow、CardinalといったフィジカルAIロボット群が培ってきた知見が、Blue Jayの高度な協調制御を支えているわけです。

作業員の身体的負担を軽減する設計思想

reduce highly repetitive tasks
出展:Amazon

Blue Jayの重要な設計思想のひとつが、作業員の身体的負担を軽減することです。システムは作業員が「パワーゾーン」と呼ばれる人間工学的に最適な範囲で作業できるよう支援し、反復的な手の伸ばしや重量物を持ち上げる動作を削減します。

アマゾンは同様の設計思想を持つ触覚搭載ロボット「Vulcan」も導入しており、物理的に負荷の高い作業をロボットが代替することで、従業員の怪我リスクを30%低減させるという目標を掲げています。これは大きな前進ですよね💪

新しいキャリアパスも創出

ロボットの導入拡大に伴い、アマゾンはメカトロニクスやロボティクス分野の人材育成にも注力しています。「Career Choice」プログラムや見習い制度、AI教育プログラムを通じて、従業員がロボットと協働するスキルやロボット保守エンジニアとしてのキャリアを築ける環境を整備しています。

協調型AIシステム「Project Eluna」との連携

Blue Jayと同時に発表されたのが、協調型AIシステム「Project Eluna(プロジェクト・エルナ)」です。物流センターのオペレーター向けに設計された意思決定支援AIで、施設内の数十のダッシュボードを統合し、ボトルネック予測やリソース配分の最適化を支援します。

オペレーターは「ボトルネックを避けるために人員をどこに配置すべきか?」といった質問を投げかけるだけで、過去データとリアルタイムデータに基づいた明確な推奨案を受け取ることができます。Project Elunaはテネシー州のフルフィルメントセンターにおいて、2025年のホリデーシーズンからパイロット運用が開始されます。

Blue JayとProject Elunaは、VulcanやDeepFleetなど最近の進歩を土台に、アマゾンが目指す「フィジカルAI」のアプローチをさらに発展させています。フィジカルAIとは、物理的な接触を通じて学習し、大規模な協調動作を行い、現実世界で人々をサポートする技術です🤖

サウスカロライナ州で稼働開始、当日配送を加速

Blue Jayは現在、サウスカロライナ州の施設で実稼働テストが行われています。将来的には、アマゾンのSame-Day配送センターの中核技術として展開される計画です。

米国の主要60都市圏では、2025年3月時点でPrime会員注文の60%が当日または翌日に配送されており、Blue Jayのような自動化技術の進化がこの比率をさらに押し上げると期待されています。顧客にとっては高速配送、作業員にとっては安全で効率的な作業環境、そして施設運営者にとっては省スペース化という三方良しの効果が見込まれますね✨

アマゾンロボティクス部門のチーフテクノロジスト、タイ・ブレイディ氏は「真の見出しはロボットについてではなく、人についてだ。私たちが共に築く働き方の未来なのだ」と語っています。Blue JayはVulcan(触覚搭載ロボット)やDeepFleet(大規模ロボット群制御AI)といった最新技術と並び、物理世界から学習するAIが作業環境を改善し、従業員体験を向上させるというアマゾンの方針を具現化するものです。

関連リンク

※トラロジでは、読者の皆様が最新物流技術を深く理解できるよう、信頼性の高い公式情報源へのリンクを厳選して掲載しています。各リンク先ではシステムの技術仕様や導入事例を詳細に確認していただけます。

  • アマゾン
Amazon Blue Jayアーム
トラロジの最新情報をチェックしよう!