
複数種類のロボット導入による包括的自動化
保管・ピッキングエリアの革新
常総物流センターでは、オークラ輸送機との協力により、HIK ROBOT社製のCTU(Carton Transfer Unit=コンテナ移載ロボット)50台とLMR(Latent Mobile Robot=潜入式搬送ロボット)50台を導入しました。CTUは、高層ラックに集積保管したコンテナをロボットが出し入れする仕組みです。出荷時はCTUが取り出したコンテナを小さな棚(ポッドと呼ぶそうです)に入れます。棚にはコンテナが18個入ります。この棚の下にLMRが潜り込み、持ち上げて作業ステーションまで搬送します。ACR(Autonomous Case-handling Robot)の、親機(ここではCTU)と子機(同じくLMR)に分かれて作業するタイプと同様の仕組みと言えます。子機が複数のコンテナをまとめて搬送するのは特徴的ですね。LMRは棚を搬送しているので、棚搬送ロボットにも該当します。これらの組み合わせにより、従来人手に依存していた保管・ピッキング作業の大幅な効率化を実現しています。
特に注目すべきは、CTUの導入台数と稼働エリアが国内最大規模となっている点です。
800店舗対応の仕分け自動化システム
出荷仕分けエリアでは、プラスオートメーションが提供するt-Sort sd5を120台導入し、防火区画を跨ぐ3区画同一エリアに約800間口のシュートシステムを構築しました。国内での仕分けロボットの導入事例としては最大規模となります。
従来は作業員が商品を持って各店舗の段ボール前まで歩いて投入していた作業が、約800店舗分の自動仕分けに置き換わったことで、作業時間の約60%削減と作業員の身体的負荷軽減を同時に達成しています。
コンベアラインと製函・封緘機
コンベアラインと製函・封緘機はオークラ輸送機が提供しています。t-Sort架台の上下にコンベアを這わせ自動化し、段ボールの搬送作業を軽減しました。
アダストリアの常総物流センター紹介動画。各自動化機器が活用される様子も紹介されています。
自動化効果と戦略的背景
劇的な生産性向上を実現
今回の自動化プロジェクトにより、常総物流センターでは以下の成果を上げています:
入荷プロセス
- 生産性40%向上
- 作業キャパシティ60%向上
出荷プロセス
- 生産性60%向上
- キャパシティ40%向上
プラットフォーマー戦略への対応
アダストリアグループは「中期経営計画2030」において、自社ブランドのみの扱いに留まらないプラットフォーマーへの進化を目指しており、自社ECモール「and ST」での他社ブランド参画拡大に伴う物量増加への対応が急務でした。現在9ブランド約800店舗分の出荷を担う同センターは、年末までに11ブランドまで拡張予定となっています。
関西エリア展開と全国ネットワーク強化
またアダストリアグループは2025年8月1日、兵庫県神戸市に西宮北物流センターを新設開設しました。約5,800坪(約18,800㎡)の規模を持つこの新拠点により、配送リードタイムの短縮とBCP強化を図り、バリューチェーン全体の最適化を進めています。
これにより、全国8拠点での物流ネットワークが完成し、1,500店舗への効率的な配送体制が整備されることになります。
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