物流ロボットの市場規模、市場動向とその将来予測を解説 独自の考察も加えています!

  • 2024年5月27日

この記事では、物流ロボットの市場動向と、将来的な市場規模の予測について詳しく説明します。国内市場の他に、世界全体での物流ロボット市場の動向についても触れています。また、どの種類のロボットが特に大きく成長すると考えられるか、独自の考察も加えています。
物流ロボットについて、その種類やメリット、関連する情報システム、そして導入方法から普及にあたっての課題まで幅広い論点を網羅したメイン記事も合わせてご覧ください。

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代表的な物流ロボット12種類を一覧で紹介

国内の物流ロボット市場の推移と予測

物流ロボット市場は2025年に約600億円に成長

矢野経済研究所が発行したマーケットレポート「2022年版 物流ロボティクス市場の現状と将来展望」によりますと、日本国内の物流ロボットの市場規模は、2021年の実績で約240億円でした。2022年以降の予測も示されており、その最も先の年となる2025年には、市場規模が約600億円になるとされています。4年間で5倍に成長することになり、CAGR(Compound Average Growth Rate = 年平均成長率。成長率を、複利を加味して示す指標)は25.6%です。CAGRの全業種の中央値は2%台であることや、世界のSaas(Software as A Service)市場の、2022年から2030年までのCAGRが18.83%と予測されていることと比較しても、物流ロボットの成長率は非常に高いと言えます。
なお、同じマーケットレポートが、この2年前の2020年に発行されています。こちらでは2030年の市場規模が約1,510億円になると予測されていました。2022年版では上述の通り2025年までの予測に留められており期間が短くなっています。成長の予測に幅があり、読みにくいのかもしれませんね🧐 次の版はおそらく2024年末頃に発行されるのではないかと思います。

物流ロボットの市場規模予測
物流ロボット市場規模の推移と予測を示すグラフ

市場予測の対象とされているロボット

矢野経済研究所のマーケットレポートでは、物流ロボット市場に含まれるロボットは次の表のように定義されています。入出庫、保管、ピッキング、搬送・仕分けと、物流倉庫内で活用されるロボット群になります。

マーケットレポートにおいて、物流ロボット市場に含まれるロボットの定義
矢野経済研究時のマーケットにおいて物流ロボットに含まれるとされているロボットの種類
出展:矢野経済研究所

 

トラロジが代表的な物流ロボットを一覧化した次の図と大体は共通なのですが、右端に記載しているヒューマノイドロボットと配送ロボットは矢野経済研究所のマーケットレポートには含まれていません。物流倉庫内で、現在実際に利用されているロボットが対象とされていますね。

トラロジがまとめた、代表的な物流ロボットの一覧
代表的な物流ロボット12種類を一覧で紹介

世界の物流ロボット市場の推移と予測

世界全体の物流ロボット市場は、2030年頃に300億ドル(5兆円)くらい?

続いて、世界全体での物流ロボット市場の動向や予測にも触れたいと思います。複数の機関、企業が予測を出しており、対象とするロボットの種類/範囲や予測の対象期間が同じでなかったりするのを・・・かなりアバウトにまとめると、2030年頃に300億ドルくらいになる、という予測になりそうです。時期も金額もあくまでアバウトですのでご了承ください😅 1ドル150円なら円換算すると5兆円くらいになります。CAGRは16%くらいと、やはりかなり高い水準と予測されます。

世界の市場の中で日本市場が占める割合は大体3%くらいとなりそうです。EC物流の増加等の要因で物流ニーズが高度化し、物流倉庫における作業量が膨大に、しかも内容が複雑になっていくことへの対策として物流ロボットへの期待が高いのは各国に共通です。日本の場合は更に、人手不足を解消するための取り組みが急務であるという事情があります。アメリカではAmazonやWalmartといった大手事業者が物流ロボットへの大規模な投資を行っていることで市場の拡大を牽引していますし、中国も、世界的に見てもEC化率(小売全体に占めるECの割合)が圧倒的に高いため(2021年時点で、日本やアメリカが10%少々なのに対して中国は40%超)、物流ロボットをはじめとする自動化・省力化設備への投資には積極的です。多少の事情の違いはありますが、とにかく物流ロボット市場が世界的にも急成長していくことは間違いないと言えます。

このアバウト予想の参考にしたマーケットレポートを以下に紹介します。

Allied Market Research
2021年の市場規模(実績)は約63億ドル
2031年の市場規模(予測)は約278億ドル

Future Market Insight
2023年の市場規模(予測)は約82億ドル
2033年の市場規模(予測)は約381億ドル

FORTUNE BUSINESS INSIGHT
2021年の市場規模(実績)は約61億ドル
2029年の市場規模(予測)は約210億ドル

物流ロボットの種類別に今後の市場動向を考察

近年に特に成長する物流ロボットはどれか?

まず大前提として、先に挙げたような代表的な物流ロボットは、どれも今後大きく成長していく見込みです。その中で、ここ5年程度で特にこの種類が大きく成長するのではないかとトラロジが注目するのは次の5つです。
・高層・高密度GTP
・パレットシャトル
・搬送ロボット
・自動フォークリフト
・仕分けロボット

代表的な物流ロボットの内、近年特に成長しそうと考えられるタイプをピックアップ

なぜ特にこれらが成長するのか、共通して言えそうな根拠が2つあります。1つは、技術的にある程度こなれてきて利用環境も整ってきていることです。他のロボット、例えばピースピッキングロボットやヒューマノイドロボット、配送ロボットのことを考えると、まだ技術面、(人との共存であったり道路利用であったり)環境面でのハードルがやや高い部分があると感じます。もう1つは、ロボットの稼働時間が十分に長く、稼働率を高くしやすい、そのためROI(投資対効果)を大きくしやすいタイプであることです。

続いて、種類別の考察も紹介したいと思います。

高層・高密度GTPは、新しいソリューションも続々と登場するトレンド分野

Autostoreが登場した後、それに続いて様々なタイプの高層・高密度GTPが登場しています。高層・高密度GTP は(おそらく)トラロジ独自の分類でありネーミングなのですが、AmazonのKivaのような棚搬送ロボットよりも高層のラックに、コンテナやケースという(棚丸ごとよりも)小さな単位で高い密度で荷物を保管し、そしてコントロールするGTPソリューション群を指しています。棚搬送ロボットと高層・高密度GTPの比較については次の図をご覧ください。

棚搬送ロボットを源流に、AutostoreやACRといった高層・高密度保管タイプの物流ロボットに発展していることを示す図

2020年前後くらいからACR、Skypod、Bastian、Alphabot、T-AstoroX、Renatus、ラピュタAS/RS、Airrobなどなど、沢山の種類のソリューションが登場しています。近年の物流関係の展示会でも、最も大きなスペースで展示されて、注目を集めているのではないでしょうか。導入事例は今後増えるでしょうし、大規模なソリューションであるため導入1件あたりの金額規模が大きくなりやすい(二桁億円になることもある、という話も耳にします)こともあり、高層・高密度GTPの市場が今後大きく成長していくことは間違いがなさそうです。もちろん、ただ金額規模が大きいだけではなく、倉庫業務の中でも最も人手が必要な出荷業務の効率化に貢献するソリューションですので、導入による効果も大きくなります。
物流ロボットというとまずこれらのタイプを思い浮かべる方も多いのではないかと考えて、最初に挙げさせていただきました。高層・高密度GTPのトレンドについては別記事でも詳しく取り上げていますのでよろしければ合わせてご覧ください。

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パレット単位の荷物の効率的な処理と高密度保管に優れたパレットシャトルも活用が広がる

パレット単位の荷物を効率的に処理し、高密度保管を実現するソリューションとして、パレットシャトルも広く普及していくと考えます。従来のスタッカークレーン式の自動倉庫と比較してメンテナンスしやすいのが特徴で、業務の柔軟性や拡張性に優れます。

パレットシャトル
パレットシャトル
出展:Quantumlytix

搬送ロボットは、他の手段(作業者、フォークリフト、コンベア等)の代替として活用が広がる

搬送ロボットには、パレットを搬送するタイプ、カゴ台車を牽引するタイプ、手押し台車のような形状で好きに荷物を載せられるタイプなどがあります。これらは、フォークリフトによるパレットの運搬、作業者によるカゴ台車や台車の運搬、コンベヤによる荷物の運搬を代替して、その作業を自動化・省力化できるものです。単純な運搬作業であれば物流ロボットによる代替もしやすいはずで、大きく成長、普及する種類なのではないかと考えます。
コンベアラインを設置することと比較して、固定的な設備にならないため省スペース化できる、作業動線の自由度が上がる、防火区画による制約を受けにくい、消費電力が下がる、といったメリットも期待されます。

いよいよ実用性が高くなってきた自動フォークリフトの普及にも期待

自動フォークリフトは、無人フォークリフトやAGF(Automated guided forkliftの略)とも呼ばれます。ここ2、3年で(この記事の初公開は2024年です)性能が向上して、かなり実用的になり導入事例が増えてきている印象があります。先に挙げたマーケットレポートとはまた別のものになりますが、「自律走行型フォークリフトの世界市場-2023年~2030年」(https://www.gii.co.jp/report/dmin1336699-global-autonomous-forklift-market.html)において、世界の自動フォークリフトの市場規模は2022年の実績で38億ドル、2030年には104億ドルに達すると予測されています(物流ロボット全体の3分の1にあたりかなり大きいことになりますが、製造業)。その予測期間中のCAGRは5%と物流ロボット全体よりはやや低いのですが、新しいソリューションも増えてきており、短期間で大きく成長するのではないかという期待も込めて挙げました。

ロケーション間のパレットの移動や、パレットラックやネステナーからのパレットの出し入れといった用途で活用されます。以前にメーカーのプレゼンテーションを見た際に、1時間あたりの生産性が30パレットくらいとされていました。有人のフォークリフトは標準的な生産性が60パレット/時間くらい、すごく速い作業者だと90パレット/時間くらいだそうで、これには及ばないまでも投資回収は十分にできる水準になってきているということでした。

物流ロボット活用の裾野を広げてきたヒット商品、仕分けロボット🤓

t-Sortシステムに代表される仕分けロボットは、現時点でも既にヒット商品と言えるでしょう。仕分け工程はもちろん、保管小さな荷物を搬送する用途など様々な導入事例があります。比較的に安価で、早い段階からRaaS(Robotics as a Service)形式での提供もされており、そして大規模な工事を必要とせず短期間ですぐ使い始められるため、非常に導入しやすい物流ロボットです。
GTP型のソリューションとの相性もよく、ピッキングに後続する仕分け工程を担当するロボットとしてセットで提供されることも多いようです。今後も導入が広がっていくと思われます。

仕分けロボット t-Sortシステムの活用イメージ
物流倉庫でt-Sortシステムを活用する事例出展:プラスオートメーション

 

特に大きな成長をしそうだと考えたものをピックアップして紹介しましたが、その他の物流ロボットも事例を重ねて機能も高度になり、そしておそらく導入コストが下がって行くにつれて、活用がどんどん広がっていくはずです。今後も動向がわかってきたものがあればアップデートしていきたいと思います。

物流ロボット市場規模の推移と予測を示すグラフ
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