中堅・中小企業向けWMS選定のポイントを解説

  • 2024年1月28日
目次

本記事では以下の方に向けてWMS選定の進め方をご紹介させていただきます。

EC事業者

EC事業を営んでいるToCビジネスの企業様。特に想定しているケースとしてはビジネスの伸長に比例して出荷量が急増。それに伴い在庫の保管、荷役、包装作業をこれまで以上に効率的にしなくてはならない。そのためにWMSを導入しようとしている。このような企業の関係者様。

倉庫事業者

中堅あるいは中小の倉庫事業者様。事業は堅調。以下理由からWMSの新規導入や現行WMSからの入替を検討している企業の関係者様。

  • 既存の荷主のニーズの拡大や新たな荷主の獲得に伴い在庫管理やピッキング、セット品・同梱品の対応が必要に
  • 事業環境の変化に伴う急な処理量の増加へ対応できるようにしたい
  • より効率的な倉庫運営のため季節波動による作業量のバラつきをコントロールしたい
  • 自社の経営管理の最適化を目指してWMSと基幹業務システムを連携させるため

物流・ロジスティクスを表現する様々な仕組み

WMSとは

「倉庫管理システム(WMS)」とは物流の「保管」「荷役」「流通加工」「包装」を対象とした情報システム

「WMS」とはWarehouse Management Systemの略です。倉庫在庫管理、ロケーション管理、検品、ピッキングといった機能を備えています。

「WMS」導入の目的は、実務における日々の作業を効率的に行うこと、そして情報を正確・適時に電子データとして蓄積することで管理の品質を上げることです。

  • 作業進捗の可視化と管理の省力化
  • 作業の標準化によるミスの軽減
  • マテハン機器などとの連携で作業生産性を向上させる
  • 蓄積した予定・実績データによる作業計画の精度向上

WMSの種類

WMSに限らずですが近年の情報システムの導入には、「自社で開発するか」「既存の製品・サービスを利用するか」の選択肢があります。業種によらず多くの企業で利用されている販売管理などの業務系情報システムと同様にWMSも自社で開発する「スクラッチ(開発)」、既存の製品・サービスの「パッケージ」や「SaaS」から選択することが出来ます。

「スクラッチ(開発)」

開発とある通り、自社で独自にシステム全体を開発することを意味します。独自といっても、システムエンジニアを含め自社のリソースだけで実現することは稀です。開発はシステム専門企業(開発ベンダー)に依頼することがほとんどですが、システム要件は自社独自の内容を反映します。

「パッケージ」

パッケージソフトウェアの略で、多数のユーザーに向けて作られた既成品です。あらかじめ想定するビジネスモデルに即した機能のテンプレートが組み込まれています。多数のユーザー企業に向けた機能でも、自社の要件と合わない部分もありえます。その場合は、パッケージに予め備えてある調整可能な部分の「パラメーター設定」やパッケージのプログラムに変更や追加をする「カスタマイズ(開発)」を行います。

「SaaS」

SaaSとはSoftware as a Serviceの略で「サース」または「サーズ」と読みます。システムを必要な分だけ利用するサービスです。サービスベンダーはクラウド環境でシステムの機能を提供します。クラウド環境は「シングルテナント」「マルチテナント」に大別することができ、「SaaS」とは狭義には「マルチテナント」クラウド環境でのシステム利用です。「マルチテナント」とは複数のユーザーが同一システムを利用する方式です。複数のユーザーが同じサーバーやアプリケーション、データベースといったシステムやサービスを共有して利用する方式です。同一のサーバーやデータベースを仮想的に分割し、各ユーザーはそれぞれ与えられた領域を利用できるようになっています。このように、ひとつの環境を複数のユーザーでシェアすることで、サービス利用のコストをおさえることが可能です。

上記に加えて、「パッケージ」「SaaS」には製品・サービスそれぞれに特徴があります。

主要な「パッケージ」製品は以下の必須機能に加えて豊富な機能を備えています。「カスタマイズ(開発)」の実績有無や数、それら経験のノウハウ化によって差別化がされています。

  • 入荷管理
  • 出荷管理
  • 在庫管理
  • 棚卸管理
  • 帳票・ラベル発行

「SaaS」は「パッケージ」に比べて必須機能がコンパクトに実現されています。必須機能を満たしつつ各社/各製品、多言語対応やEC対応などの特徴を備えています。最近は、D2C・EC事業者向けにOMS(Order Management Systemの略で「注文管理システム」)との連携を前提とした特化型が存在感を増しています。

 

自社の要件にあったものを選べと言われても・・・

出来るだけ多くの選択肢から比較検討して、導入する製品やベンダーを決めたいものです。「スクラッチ」、「パッケージ」、「SaaS」それぞれ複数社から説明を受けて、見積りと提供された機能等のスペックを比較して、「パッケージ」・「SaaS」であれば多くは無償で提供されるトライアル版を操作してみて…確かに理想的ではありますが、これには多くの工数と期間を要します。どれだけの数をどの程度比較検討すれば良いか、画一的な解答も無いため導入を検討される企業のご担当者様が悩まれるのも無理はありません。結局期限に迫られ1社のみ詳しい提案を受けて決めてしまう企業様もいらっしゃいます。あまりにリスクの大きな決め方なのでどうか避けていただきたいです。

少なくとも5社の製品・サービスの機能と見積りを比較していただきたいです。また比較する対象の絞り込み方も効果的な進め方があると考えています。

WMS選定対象の絞り込み方

WMS選定対象の絞り込み方

 

「パッケージ」・「SaaS」とのGapはどこか、Gapはカスタマイズで解消できないかから検討するのが効率的です。一般的に「Fit&Gap」と言われます。

分岐①:「パッケージ」・「SaaS」の機能が概ねマッチするか

WMS選定対象の絞り込み方 ②出荷数量がカタログスペックに収まるか

機能、もう少し限定すると業務機能がマッチしないとはどういうことでしょうか?「パッケージ」・「SaaS」といった既製品がぴったりと自社の業務に合っていれば悩むことはありません。しかし、大なり・小なり企業毎に業務の仕方は異なっているものです。「パッケージ」・「SaaS」も多くの企業や現場に受け入れてもらえるよう、データの入力内容や方法、画面での項目配置や帳票レイアウトなど調整可能な部分が多分にあります。さらに「パッケージ製品」は「SaaS」との差別化も意識されているのか、「カスタマイズ(開発)」による柔軟な対応が可能なことも少なくありません。

それでも以下のようなケースに自社が該当する場合は、「業務機能が(既製品に)マッチしない」と判断せざるを得ません。

  • 自社の主要な業務プロセスが一般的な「入荷」「出荷」「在庫」などのプロセスと異なっている
  • 複数の「パッケージ」製品と開発ベンダーに確認したが、必要な機能の「カスタマイズ(開発)」が困難

開発ベンダーも「出来ない」と回答することはまれだと思います。しかし、過去の同様の事例があるのか確認すると「無い」あるいは「乏しい」と回答されたり、開発費用がパッケージ自体の導入費用に比して大きなものになると回答されます。

既に書いた通り、例えば帳票のレイアウトが多少独自という要件の実現性は高いです。しかし、非常に専門的な出荷梱包作業を専業にしているとか「在庫」~「出荷」間に独自のプロセスがあり、その業務のアウトプットの帳票出力が必要となると様相は変わります。帳票のレイアウトや出力機能は出来ても、必要な情報の入力方法や入力データの流れが「パッケージ」・「SaaS」が想定する機能間の流れとマッチしない。そのためWMS外で作業して情報を手入力しなければならない。あるいは強引に標準機能を改変したためオプション機能を使えなくなったりします。こうなると「パッケージ」・「SaaS」を選択するメリットは損なわれ、デメリットやリスクが大きくなってしまいます。

分岐②:出荷数量がカタログスペックに収まるか

WMS選定対象の絞り込み方 ②出荷数量がカタログスペックに収まるか

業務機能という点では「パッケージ」と「SaaS」に本質的な違いはありません。「SaaS」はマルチテナントの制約で、「パッケージ」は自らの差別化(ポジショニング)のため、総じて「パッケージ」は「カスタマイズ」が強みになります。いずれも既製品なので最終的には個々の製品やベンダーによって「カスタマイズ」などで調整できる範囲や箇所には幅があります。個々の製品/ベンダーを比較する前に「パッケージ」か「SaaS」かの分かれ目になるのが処理できるデータの量、あるいはパフォーマンスです。

具体的には、「出荷明細数が日10万」あるいは「月100万」を超えるか否かを一つの基準にします。個々のサービスによって幅はありますがこれだけの明細数(トランザクション数)だと「SaaS」では荷が重い場合があります。逆にこの数値以下であれば「SaaS」の中から積極的に選んでいきたいです。

「SaaS」は多くの場合、出荷明細数などデータ容量に上限や推奨値があります。データの保持期間もあります。受払などのデータは基本は3ヶ月や6ヶ月まで保持されるがそれ以降は削除される仕様であることがほとんどです。商品等のマスタの登録数に上限が定められていることもあります。

受払のデータを仮に長期保持したい場合、定期的にダウンロードするなどのシステムの運用や仕組で対応策を取ることができます。しかし処理する出荷量を抑制するなどという対応は本末転倒です。

「出荷明細数が10万/日や100万/月」を超えてもまだ「SaaS」は選択可能です。「SaaS」の強みであるコストメリットが少し得られにくくなりますが、自社のデータ数に類似した実績があるサービスから選択すれば良いのです。

料金体系が「ユーザー数」「拠点数」課金の場合は出荷明細数の上限があるはずです。料金が変わらずデータ容量が無制限ということはあり得ません。
上限を超えるは別途の対応が必要となります。シンプルな対応としてはシングルテナントでの提供です。マルチテナントによりおさえていたコストを1社で負担することになります。通常利用と解約条件が異なるなど契約内容も変わってきます。また想定を大きく超えるデータ数は処理や検索のパフォーマンスを指数関数的に劣化させます。想定の2倍のデータ量は、処理時間を2倍ではなく4倍あるいはそれ以上にしてしまう可能性があります。

「出荷明細数(データ数)」課金の場合は料金表に金額が明記された範囲とそれを超えて別途見積りと記載されることが主です。データ数が多い方が1明細あたりの単価が下がるボリュームディスカウントがあることがほとんどです。ベンダーにとって「別途見積り」となるほどの大きな売上は魅力的です。ベンダーは総額が高額になり導入企業の負担が大きくなっていることも理解しているので大胆な値引きを提案してくれこともあります。ただデータ容量が足りたとしても前述の通りシステム自体がそれだけのデータ数に耐えられる設計がされていないと処理や検索のレスポンスにストレスを感じることになります。他社事例が豊富にあるのか、具体的にどれだけのデータ数がどれだけの期間運用されているのかなどの確認が必要です。

分岐③:特徴が自社の要件にマッチする「SaaS」はどれか -主要な「SaaS」は特徴が明確

WMS選定対象の絞り込み方 ③特徴がマッチするのはどれか

「SaaS」の中で軸にするサービスを絞り込みます。導入企業の多さや口コミ等の評判が参考になります。しかし、それに加えて是非知っていただきたいのが各サービスの特徴(強み)です。

汎用型

クラウド型WMS導入ランキング

クラウド型WMS導入ランキング

 出典:LogisticsToday

 

上記ランキング1位でもある「ロジザードZERO(ロジザード社)」はこのジャンルでの草分け的存在です。導入クライアントや拠点も多く、実績も非常に豊富です。長く・多くの企業で利用され培われた汎用性ももちろんですが、BtoCのECが得意です。EC向けに様々なオプションも充実しています。

もう1社このジャンルでの草分け的存在が「ci.Himalayas(シーネット社)」です。こちらも導入クライアント・拠点・実績も非常に豊富です。汎用性はもちろん「ロジザードZERO」に比べて規模の大きな企業への導入比率が大きいです。そして「ci.Himalayas」の強みは温度帯管理など冷蔵・冷凍倉庫への対応です。温度帯管理が必要な食品へ大きな強みをもっています。

WMS-導入企業の売上規模の割合 

出典:LogisticsToday

コンパクト

上記2社を追いかける後発のサービスは比較的規模の小さな企業向けに、よりシンプルな機能をリーズナブルに提供する傾向にあります。「W3 mimosa(ダイアログ)」、「クラウドトーマス(関通)」がそうです。

特化型

また近年存在感を増しているのが、よりECやD2Cを専業とする企業に特化するサービスです。「AirLogi」「LOGILESS」などがその筆頭です。

 

自社の業態や事業内容、あるいは導入目的と合致しそうなサービスを主軸として他のサービスを比較することで効率的な選定ができます。

「汎用型」「特化型」などマッチするものを主軸にする

 

分岐①で「パッケージ」・「SaaS」の機能がどうしてもマッチしないのであれば「スクラッチ」を主軸に検討する

 

既に多くの企業様・担当者様がご存知の通り、「スクラッチ」となるとある程度のコストは覚悟しなければなりません。予算は数千万円単位です。「フルスクラッチ」なら億単位になることもあります。

「スクラッチ」といっても幅があります。「フルスクラッチ」が悪い訳ではありませんが、冒頭でも書いたこの記事でターゲットとする企業様・担当者様にとってシステムの1から10まで全ての仕様を決めることがその投資額に適うとは思えません。そのため「フルスクラッチ」は避けて、出来るだけ開発ベンダーの開発・技術資産(レガシー)を活かした、例えば「セミスクラッチ」といったアプローチを主軸に検討していただければと思います。

既に実績や技術が確立しているレガシーを可能な限り活用することでコストと失敗リスクを低減できます。実績や技術が確立しているものを活用してコストとリスクを低減するという点では、やはり「パッケージ」に利があるので、「スクラッチ」との比較として「パッケージ」の標準機能とそれを補完する「追加開発(アドオン)」や「サブシステム開発」というアプローチも視野に入れてもらえればと思います。

軸が決まったら本格的な提案・見積りを受ける -5社選ぶ

以下のように少なくとも5社選んで提案・見積りを受け、比較していただくのがおススメです

主軸とする「スクラッチ」「パッケージ」「SaaS」から3つ選択

まず、主軸とする「スクラッチ」、「パッケージ」あるいは「SaaS」のジャンルから3社を選びます。特に「SaaS」の場合はサービスの特徴・強みが自社に合致しそうなものを積極的に探します。例えば、D2Cがメインの企業様であれば「AirLogi」、「LOGILESS」をまず比較の対象にします。

主軸以外からも2つ選択

次に主軸以外からも2つ選択します。

主軸が「スクラッチ」なら「パッケージ」からも2製品選択します。出来るだけ「パッケージ」の業務機能が自社にマッチしているものを選ぶのが理想的ですが、本格的な提案を受ける前から判断するのは容易ではありません。そもそも業務機能がマッチしない」から「スクラッチ」が主軸なのです。

そこで、拡張性が高い製品を選ぶようにします。その「パッケージ」製品だけで解決できなくても、サブシステムなどを利用することで業務に無理なく、「パッケージ」のメリットを享受出来る可能性があります。そのため、他システムと連携するためのAPIが充実しているか・整備されているか、その他連携の実績は豊富かなどを拠り所に選んでもらえればと思います。

「パッケージ」が主軸なら「スクラッチ」から1社、「SaaS」からも1サービス選択してください。こうすることで費用感をより把握することができます。

「SaaS」が主軸の場合は、「SaaS」中で強みの異なるものや「パッケージ」からも選択して比較してください。先の通り、D2Cがメインの企業様が「AirLogi」、「LOGILESS」などの「特化型」を比較の主軸にする場合、「ロジザードZERO」や「W3 mimosa」などから1社、そして「パッケージ」からも1社、比較をしてください。

 

提案・見積りを受ける -自社の要件はどのようにまとめるのか

良い提案を受けるためには自社の要件をまとめる必要があります。また提案の良し悪しを判断するためにも自社の要件にあっているかを可視化・定量化する準備していることが理想です。そして多くの企業様が、自社の要件をまとめることいわゆる要件定義(業務の要件定義)の重要性は知っているあるいは散々見聞きしていることと存じます。その上で、「どうすれば良いか分からない」、「理解はしたがそんな時間はとれそうにない」、「やっているが(みたが)上手くいかない」ので外部でどうにか出来ないかと考えられているかもしれません。しかし、仮に外部の例えば要件定義の支援を専門あるいはシステム開発とセットで提案する企業に頼るとしても、自社が主導する、出来得る限りのことはするという姿勢でいていただきたいと思います。

システム開発とセットで提案される場合、無償で要件定義を支援すると説明される場合もあります。しかし常識的に考えれば「要件定義」を行うのはそれほど容易なことではなく、「要件定義の支援」だけでプロフェッショナルサービスを提供している企業もあるのですから、無償で出来る範囲は限られています。あるいは、システム開発の費用に実質転嫁(上乗せ)されている場合もあります。

一方で有償なら自社はあくまで受け身の姿勢で良いかというとそうではありません。外部からノウハウを買うという点で頼るのは良いのですが、要件自体は自社にこそあります。要件やそのインプットとなる自社の情報を出すのは自社にしかできません。情報を積極的に出すのはもちろんですが、不足がないかや整理されているかは自社で担保する必要があります。情報の不足や整理の補完をさらに外部に依頼することも可能ですが、例えば不足を補おうと調査・分析まで委託すればコストは相応にかかります。

「本格的な提案・見積りを受ける」に至るまでの要件定義の仕方について十分説明しようとすると、それだけで本になるほどで、実際探せば頼りになる書籍も沢山でてきます。比較する提案すべてを出来るだけ公平に評価しようと思うと、同じ情報を同じように提案依頼先に提供したいので、依頼時までに業務側としての要件定義を十分済ませる必要があります。

要件定義を検索すると沢山の有用な書籍が見つかる

逆に「本格的な提案・見積りを受ける」先5社を選ぶ段階ではまだ猶予があります。そのため絞り込んだ5社とのコミュニケーションと「本格的な提案・見積りを受ける」ための要件定義は並行して行う事ができます。ではこのように進める場合、絞り込みの段階で最低限必要な情報とその整理はどうすればよいのでしょうか?

自社の概要と業務一覧

少なくとも揃えておくべき「自社の概要」と「業務一覧」

「自社の概要」としては、事業概要、従業員数や拠点数などもそうですが、今回はWMSの選定なので以下についても整理しておくのが良いです。

  • 「保管」、「荷役」、「梱包・包装」、「流通・加工」の有無
  • 出荷数(出荷件数・出荷明細数)
  • 温度帯:定温・常温(ドライ)、冷蔵(チルド)、冷凍(フローズン)
  • 対象の荷物
  • 倉庫の種類:DC(在庫型)、TC(通過型)、PDC(流通加工)

「業務一覧」によるチェックリスト

業務は一覧にしておくことをおススメします。業務フローや業務記述書、業務のマニュアルなども整備されていればなお良いのですが、一覧が無いと「Fit&Gap」自体をするのも、した内容を記録するのも、それを複数社分比較するのにも非効率です。逆に業務フローなどが無くても絞り込みは進められます。

一覧は、以下のような大きな項目からブレイクダウン(細分化)していくのが一般的です。例えば、大分類は入荷管理、その細目として入荷検品、入庫ラベル印刷や入庫などを記載してきます。

  • 入荷管理
  • 出荷管理
  • 在庫管理
  • 棚卸管理

次に、その細目単位でシステムに求められることを列挙します。求められることも少なくとも「必須」と「あればなお良し」に分けます。

そして最後にチェック欄を設けて、特に「必須」の要求が満たせているかが一目で分かるようにします。

 

製品/サービスの候補

SaaS

ロジザードZERO[ロジザード株式会社]

ロジザードZERO[ロジザード株式会社]

(出典:ロジザードZERO サービスサイト)

  • BtoBからBtoC(EC)、アパレルからオールレンジに対応したWMS。ECの多品種小ロットへの対応が特徴で、導入先の約8割がBtoC関連。
  • 同社のシステム、店舗管理オプション「ロジザードZERO-STORE」、オムニチャネルへの在庫管理オプション「ロジザードOCE」などとの連携により店舗やオムニチャネルへ対応。RFIDや物流ロボットへも対応。

ci.Himalayas/R2[株式会社シーネット]

ci.Himalayas/R2[株式会社シーネット]

(出典:株式会社シーネット WEBサイト)

  • 基本的な機能はもちろん複数荷主・複数倉庫に対応。賞味期限/ロット管理、不定貫や通貨(TC)への対応など豊富な標準機能。ユーザーまたはユーザーグループごとに各機能の画面表示・非表示、各データの利用可・不可の権限の設定も可能。
  • データ量等によりオンプレミス形式での提供も可能。出荷データ1日100万件規模のユーザや40拠点以上のユーザなど比較的規模の大きなの企業への導入実績も豊富。

クラウドトーマス[株式会社関通]

クラウドトーマス[株式会社関通]

(出典:クラウドトーマス サービスサイト)

  • 同社が推奨するハンズフリーで使えるリングスキャナーはもちろん物流ロボットとの連携実績も豊富。現場のニーズに寄り添った導入サポートが特徴。

W3 mimosa[株式会社ダイアログ]

W3 mimosa[株式会社ダイアログ]

(出典:W3 mimosa サービスサイト)

  • 基本的な機能を備えつつ、商品のバラ管理、ロケーション管理、ケース管理、ロット管理、賞味期限管理など150以上の標準機能を搭載。SaaSでありながら標準機能を柔軟に拡張させることが可能。

COOOLa[株式会社ブライセン]

COOOLa[株式会社ブライセン]

(出典:COOOLa サービスサイト)

  • BtoB向けにはロット・賞味期限管理や、複数拠点の管理に対応。BtoC向けには同梱物の管理、納品書や振込票などの帳票類を1枚にまとめた一体型帳票に対応。「同梱物管理機能(オプション)」は細かな条件設定が可能など機能が作りこまれている。その他オプションには商品や出荷先の誤謬を防止や検品作業効率を目的とした「物流画像検品システム」などがある。

Air Logi[株式会社コマースロボティクス]

Air Logi[株式会社コマースロボティクス]

(出典:Air Logi サービスサイト)

  • 単体ではコンパクトな機能と価格の手軽さが魅力。同社の受注管理システム「COMMERCE ROBO」とセットで利用することでEC事業へマッチした機能を提供。同社自らがECサイトを多数運営したノウハウが活かされている。

LOGILESS[株式会社ロジレス]

LOGILESS[株式会社ロジレス]

(出所:LOGILESS サービスサイト)

  • EC事業における受注・在庫・出荷の管理をカバーするOMS・WMS一体型システム。
  • 一体型のため、OMSとWMSを連携のに必要なデータ連携のツールやファイルが不要。データ連携のための追加のコストや連携の不具合の心配がない。EC事業者と倉庫事業者のベストプラクティスを目指している。
    • EC事業者:全注文の90%以上の出荷指示をシステムで自動化可能。
    • 倉庫事業者:WMSの標準的な機能に加えて、注文データの受け渡し不要のため事務作業ミスなし。

セミスクラッチ

INTER-STOCK[株式会社オンザリンクス]

INTER-STOCK[株式会社オンザリンクス]

(出典:インターストック サービスサイト)

  • INTER-STOCK(インターストック)は、パッケージによるプロトタイプからクライアントへのヒアリングを通じてシステムを作り込んでいくセミスクラッチ型のWMS導入サービス。業種・業態独自の業務要件に応じたカスタマイズ、ソース及びデータベースはすべて公開など「セミスクラッチ」という独自のポジション。またプロトタイプ元のパッケージシステムは機能はシンプルでありながら処理スピード向上の技術開発には力を入れるなどの特徴がある。
  • 基幹業務システムなどとの連携、波動や市場に変化による処理量の増加、業種・業態独自のカスタマイズなど、中規模以上の倉庫での課題に向いている。

パッケージ

SLIMS[株式会社セイノー情報サービス]

SLIMS[株式会社セイノー情報サービス]

(出典:株式会社セイノー情報サービスWEBサイト)

  • 西濃運輸における3PL事業・物流改善コンサルティングの経験や、多くの導入実績に基づくノウハウが活かされている。3PL事業者に必要な「複数寄託者・複数倉庫の一元管理」、食品に必要な「賞味期限管理」、アパレル商品に必要な「品番+色・サイズの管理」など業種ごとに必要となる機能を標準装備。
  • 自社のサーバーにインストールするオンプレミス型に加えて、ベンダーのサーバーにインストールされたソフトを利用するクラウド型がある。

ONEsLOGI/WMS[ロジスティードソリューションズ株式会社*]

*2023年に日立物流ソフトウェア株式会社より商号変更

ONEsLOGI/WMS[ロジスティードソリューションズ株式会社 2023年に日立物流ソフトウェア株式会社より商号変更]

(出典:ロジスティードソリューションズ株式会社 WEBサイト)

  • ロジスティード(旧日立物流)のグループ企業が提供する実績豊富なシステム。WMSを含めたソリューションは世界24の国と地域への導入実績があります。標準言語として日本語、英語、中国語に対応。
  • 各種クラウドシステムとのAPI連携や基幹系システムとの連携も可能。同社の在庫可視化・作業可視化を行う分析システムとの連携などオプションも豊富。

W-KEEPER[三谷コンピュータ株式会社]

W-KEEPER[三谷コンピュータ株式会社]

(出典:三谷コンピュータ株式会社 WEBサイト)

  • 複数の拠点や多様な商品への対応が可能なオンプレミス型の倉庫管理システム。複数拠点・複数荷主に対応。食品、アパレルなど多様な業種に対応。食品向け機能には期限管理、温度帯管理、不定貫対応など。アパレル向けにはカラー・サイズの管理が可能。

日本国内でERPパッケージとともにWMSがその名称とともに導入されるようになってから30年以上。必須の機能については成熟し、多くの「パッケージ」製品がリリースされました。さらに「パッケージ」もインフラ技術の進歩によりオンプレかクラウドか、さらにプライベートクラウドかパブリッククラウドかなどの選択肢が増えました。加えて「SaaS」という利用方法の広がりへと大きな変化を遂げています。 

近年ではECチャネルの拡大に伴いOMSといった周辺システムとの連携やIoT技術の進化に伴う周辺機器との連携にも力が注がれています。

このように様々な選択肢の中で判断をしなければならない企業様・ご担当者様にとって、この記事がシステム選定の一助になれば幸いです。

  • WMS
トラロジの最新情報をチェックしよう!