イオンネクスト/「Green Beans」誉田CFCに最新ロボティクスソリューションを本格導入-作業自動化率3割、現場の生産性と安全性を大幅向上

  • 2025年7月7日

イオンネクスト株式会社は、ネット専用スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」の主力物流拠点「誉田CFC(Customer Fulfillment Centre)」(千葉市緑区)に、AIとロボティクス技術を駆使した最新の自動化ソリューション「オングリッドロボットピック」と「オートフレームロード」を本格導入しました。これにより、作業工程の約30%が自動化され、従業員の身体的負担軽減と現場の生産性向上、さらには安全性の高い職場環境の実現が期待されています。

導入の背景

近年、オンライン食品購入の需要は急拡大しており、物流現場では高効率かつ柔軟なオペレーション体制の構築が急務となっています。特に、ピッキングやパッキングなどの工程、出荷準備作業は依然として人手に頼る部分が多く、現場の負担軽減と安定した供給体制の確立が課題でした。

導入されたロボティクスソリューション

オングリッドロボットピック
オングリッドロボットピック
出所:イオンネクスト株式会社
  • 役割:商品棚(グリッド)上のトートから商品を直接ピックし、袋詰めまでを自動で実施。
  • 特徴:AIが商品ごとの形状・重量・破損リスクなどをリアルタイムで認識し、最適なピッキング動作を選択。対象品目は約3,000品からスタートし、2025年度中には1万品目まで拡大予定。
  • 能力:1日あたり最大20万点のピッキング処理が可能。2kg以上の大型商品や壊れやすい商品は引き続き人手で対応。
オートフレームロード
オートフレームロード
出所:イオンネクスト株式会社
  • 役割:配送直前の注文ボックス(トート)を配送用フレーム(台車)に自動で積み込む。
  • 特徴:画像認識カメラとAIでトートの形状や重さ、フレームの状態をリアルタイムで分析し、最適な積載を実現。最大20kgのトートを自動で積載し、配送順や重量バランスにも配慮。
  • 効果:特に重労働だった積み込み作業を自動化し、100~150人分の作業を置き換える規模で負担を大幅軽減。

ユーザーの声・現場の変化

誉田CFCでは、すでに搬送ロボット「ボット」や自動袋掛け機「オートバギング」、バキュームリフターなども稼働しており、今回の追加導入でオペレーション全体の最適化がさらに進みます。従業員からは「重労働が減り、働きやすくなった」「作業の正確性が向上した」といった声が挙がっています。

トラロジ独自の視点

Ocadoの先端技術とイオンの「進化するプラットフォーム」

今回導入された「オングリッドロボットピック」は、イオンネクストが英国の先進的ネットスーパー専業企業・Ocado(オカド)社と2019年に戦略的提携を結んだことにより実現した、最新のロボティクスソリューションです。Ocadoは2000年創業、AIとロボット技術を駆使した自動倉庫・配送システムを独自開発し、世界の大手小売業者に「Ocado Smart Platform(OSP)」というエンドツーエンドのオンライン食料品販売基盤を提供しています。

OcadoのCFC(カスタマーフルフィルメントセンター)では数千台規模のロボットが稼働し、商品ピッキングから梱包、出荷までを一貫して自動化。AIによる最適化やIoT、ロボティクスの統合によって、ネットスーパーの効率化と高品質な顧客体験を実現してきました。

イオンネクストは、このOcadoの最先端技術とイオングループの小売ノウハウを融合し、日本の消費者ニーズに合わせてサービスを展開。特に「進化するプラットフォーム」というコンセプトのもと、各国パートナーや現場からのフィードバックをもとに、1カ月に33回以上ものシステムアップデートが行われることもあり、絶えず現場課題や顧客体験の向上にアジャイルに対応しています。

また、イオンのネットスーパーでは配送業者ではなくイオンの販売員が直接配送を担うことで、地域のリアルタイムな様子やお客様の声を現場で把握し、きめ細やかなサービスや現場フィードバックの迅速な反映が可能となっています。IoTによる食品品質管理やコールドサプライチェーンの強化など、グループ横断での新技術活用も積極的に推進しています。

このように、オングリッドロボットピックの導入は、Ocadoとの提携による「進化するプラットフォーム」の実践例であり、グローバル最先端の知見と日本の現場力が融合した、今後の物流自動化の象徴的な事例と言えるでしょう。

オングリッドロボットピックの革新性:保管スペースでのピッキング完結がもたらす新たな価値

今回の導入で最も画期的なのは、従来はOcadoのトート(コンテナ)を作業ステーションまで搬送してから人がピッキングしていた工程を、Ocadoのラック部分上部にオングリッドロボットピックを設置することで、保管スペース付近でピッキングを完結できるようになった点です。
これにより、
  • トートの長距離搬送が不要になり、搬送工程を大幅に短縮
  • 作業ステーション自体のスペースを大きく節約
  • ピッキング後の商品だけを効率的に搬送でき、全体の動線最適化・省エネにも寄与
というメリットが生まれています。
この「保管スペースでピッキングを完結し、ピッキング済み商品だけを搬送する」仕組みは、従来の自動化設備にはなかった発想であり、今後他の自動化設備でもこのような機能が標準化されれば、物流現場全体の生産性向上やスペース効率化に大きなインパクトを与えると考えられます。

アマゾンの触感を備えた物流ロボット「Vulcan」と「オングリッドロボットピック」

イオンネクストの「オングリッドロボットピック」導入のニュースをみて、Amazonの最新物流ロボット「Vulcan」を思い出しました。両者はいずれも、これまで人に頼っていたピッキングや棚入れといった倉庫現場の繊細な作業を物流ロボットとAIを活用して自動化するために開発された点で、発想の根底に通じるものがあります。
  • Vulcanは「触覚AI」により、従来ロボットが苦手とした“人の手の繊細さ”を実現し、より人に近づくアプローチを採用。狭い区画に商品を押し込んだり、壊れやすい商品を傷つけずに扱うなど、人間並みの器用さが求められる作業を自動化することで、ピッキングやストウ(棚入れ)における「柔軟性」と「安全性」の両立を目指しています。
  • オングリッドロボットピックは、現状ロボットにできないことは無理に自動化せず、人が担う領域を明確に残すアプローチが特徴。AIによる多品種判別や袋詰めの自動化で大量処理能力を発揮しつつ、形状や重量、破損リスクの高い商品は人手で対応することで、現場の安全性や作業品質を確保しています。
今後、Vulcanのような触覚技術がさらに進化すれば、より多くの作業領域で人の手を代替できる可能性がありますが、現場ごとの商品構成やオペレーション特性を踏まえた「人とロボットの最適な役割分担」も、引き続き重要なテーマとなるでしょう。

関連リンク

Green Beans 誉田CFC ロボティクスソリューション導入ニュースリリース
イオンネクスト×Ocado 提携の詳細・組織文化
参考:トラロジ既存記事
物流ロボットの市場動向・導入事例まとめ
アマゾン/触覚を備えた物流ロボット「Vulcan」棚入れとピッキングを緻密に実行

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