ケースハンドリングロボット「ACR」のパイオニア HAI ROBOTICSに、ソリューションの優位性や日本での展望を独占インタビュー

  • 2024年2月25日

この記事の公開日は2023/5/26です。

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物流ロボットの一種である、ケースハンドリングロボット(ケースやオリコン単位での荷物の取り扱いを自動化するロボット)の「ACR」は、世界各国で導入事例が増えており、これから日本でも導入が進んで行く見込みです。今回はこのACRのパイオニアであり、数多くの導入実績を保有され、現時点でのグローバルでのマーケットリーダーと言えるであろう、HAI ROBOTICS(ハイ ロボティクス)社を特集したいと思います。

ACRについての振り返り

先に、ACRについて簡単におさらいします。
もっと詳しい内容をご覧になりたい方は、以前にACRを特集した別記事をご覧ください。

トラロジ|物流領域におけるTransformationに特化したメディア

トラロジでは、物流倉庫で利用される最新のロボットに大注目して独自に情報収集しています。今回はその中の一つ、ACRという物…

ACRとはAutonomous Case-handling Robotの略称で、自律走行してケースを扱う(=ケースハンドリングする)ロボットです。高層ラックにケースもしくはコンテナを保管して、それをACRが出し入れして運搬するGTP(Goods To Person)方式のソリューションです。保管効率と業務の生産性の両方を向上させられるため、土地代が高く、労働力不足も深刻な日本に適したソリューションとして、トラロジも期待しています🙌

ACRの基本的な構成要素

ACRは次のような場合により高いパフォーマンスを発揮しやすいと考えられます。

  • 荷物のサイズが、ケースそのものか、オリコンに収納できるバラ品。混在もOK
  • 多品種、(出荷頻度が)中頻度、(出荷量が)小ロットのアイテム

CRで何ができるのか?どんな場合に向いているのか?

HAI ROBOTICSについて

HAI ROBOTICSは2016年に設立された中国のロボットソリューション企業です。「世界の才能を結集して、ロボット技術で人類文明の進歩を推し進めよう」というミッションを掲げています。設立以来、特にACRの開発に注力されてきました。

HAI ROBOTICSのホームページ

2023年3月時点で次のようなステータスにあります。設立からわずか7年足らずで急速に世界展開していることがわかります😲

  • 世界で30以上の国・地域に進出。
  • 1,700名以上の従業員を抱える。
  • 500以上のロボット導入プロジェクトを経験し、累計5,000台以上のロボットを提供
  • 1,100以上の特許技術を保有。
  • 中国の東莞と上海に工場を保有し供給体制を整備。東莞が主力で、18,000㎡を超える大型工場。

2021年には日本法人であるHAI ROBOTICS JAPANを設立しました。本社に併設のテクニカルセンターで、ACRのデモ見学も可能です。

ハイロボティクスジャパン テクニカルセンター
埼玉県入間郡三芳町竹間沢東 4-6
https://www.hairobotics.com/jp/technicalcenter

2023年3月には東京都港区に東京オフィスも設立されています。

インタビューにご協力くださった方々

HAI ROBOTICS JAPANから、インタビューにご協力くださった2名の方々を紹介します。ご協力ありがとうございます🙇️ ACRソリューションのデモを拝見しながらインタビューさせていただきました。

セールスディレクター 磯部 宗克さん

略歴

商業用不動産サービス会社のCBREで物流施設PMを経て物流施設の営業部に転属。そこで物流ロボットの存在を知り、2016年にボストンにある「Quiet Logistics」をプライベートで訪問しKIVAシステムやLOCUSのPOCを目の当たりにした。2017年から物流ロボットのインテグレーターであるGROUND株式会社に入社し、GTP(Butler)、AMR(PEER)の導入を担当。日本における物流ロボットの黎明期から講演等を行い物流ロボット業界の知名度と実績を積み上げていくことに貢献。
(物流およびロボティクスの経験が豊富な磯部さん。さわやかで物腰やわらかですが、ACRについての説明にはとても熱が籠っていて、自信をお持ちであることが伝わって来ました👍)

ソリューションデザイン部 マネージャー 龍 末言(ロン マツゲン)さん

略歴

2016年院卒後、住友重機械工業株式会社に入社。SE(システムエンジニア)として印刷、飲料、包材等の業界向けに物流ソリューションを計画し、その設計を担当した。
2019年からASRS、RDRV、ロボットアームなど多種類の物流設備を用いて、100インチモニター用偏光板製造ラインの全自動化物流を、日東電工様と共同で世界で初めて実現。日本と中国の偏光板業界へ向けてそのソリューション提供し、物流効率の大幅な改善に貢献した。その後、高密度保管のマジックラックや、より柔軟性の高いAMRを使用するソリューションの設計に従事。
2022年にHAI ROBOTICSへ加入。
(流暢な日本語の落ち着いた語り口で、ACRの構造や他のソリューションとの違い、またHAI ROBOTICSの特徴を、噛み砕いてすごくわかりやすく説明してくださいました🤩)

2023年のスマート物流EXPOの際に撮影された集合写真。磯部さんは後列左から3番目🤓、龍さんは前列左から3番目👍。

インタビュー開始!HAI ROBOTICSのACRとはどんなものか?

トラロジ
それではHAI ROBOTICSの皆様に色々なお話をうかがっていきたいと思います。よろしくお願いします!
最初に、HAI ROBOTICSのACRとはどのようなものか、概要を教えていただけますか?
HAI ROBOTICS
磯部さん
こちらこそ本日はよろしくお願いします。
ではまず、HAI ROBOTICSのACRの概要から紹介します。ACRシステムは、次の5つの要素で構成されています。
HI ROBOTICSのACRシステム
HAI ROBOTICS
磯部さん
① ハイピック ロボット
ACRの本体です。アームの機能や形状、背の高さ、走行方式などにより7種類のロボットに分かれています。
ハイピック ロボット
HAI ROBOTICS
磯部さん
② ストレージユニット
ケース/コンテナを保管する高層ラックです。高さは5メートルくらいになることが多いですが、倉庫物件の条件が許せば10メートルにすることもできます。
HAI ROBOTICS
磯部さん
③ ハイステーション
ロボットが出し入れするケース/コンテナに対して作業員が作業する、ワークステーションです。コンベアやラックなどで構成されます。ワークステーションには様々なパターンがあり、ユーザのニーズに応じた柔軟な設計をすることができます。
複数のケース/コンテナを同時一括でロボットと受け渡しする「ハイポート」も、ハイステーションの一種としています。
ハイステーション
HAI ROBOTICS
磯部さん
④ ハイチャージャー
ハイピック ロボットのための充電設備です。
HAI ROBOTICS
磯部さん
⑤ HAIQソフトウェア・プラットフォーム
ACRの仕組み全体を管理しコントロールするインテリジェントなソフトウェアです。
トラロジ
各要素の名称に「ハイ」が付くのですね。「ハイ(HAI)」は社名にもなっていますが、どのような意味があるのですか?音はHighと同じようで、ACRは背の高さが特徴でもありますが・・・たぶんそれとは違う話ですよね?😳
HAI ROBOTICS
磯部さん
そうですね、「HAI」は中国語で「海」を表していて、HAI ROBOTICSが大海を渡って大胆にグローバル市場に展開して、幅広いお客様にサービスを提供したい、という意欲が込められています。

HAI ROBOTICS ACRのグローバルでの導入状況

トラロジ
そうか、上海の海と同じですね。なるほど👌
では、現在までのグローバルでの展開状況を教えていただけますか?
HAI ROBOTICS
磯部さん
2023年3月時点で、世界30の国と地域で導入実績があります。中国、アメリカ、イギリス、オランダ、シンガポール、台湾、韓国、オーストラリアなどです。累計で、プロジェクトの数が500以上、ロボットの提供数は5,000以上になっています。
導入先の業種は、アパレル、家電、精密機器、電子部品、自動車部品(タイヤ)、医薬品、日用品、書籍など多岐に渡っています。

HAI ROBOTICSはケースハンドリングロボットACRのパイオニアでありリーダー

トラロジ
ここから、HAI ROBOTICSのACRの中身についてより詳しいお話をうかがっていきたいと思います。いきなり難しい質問かもしれませんが・・・HAI ROBOTICSのACRの特徴をざっくり説明するとしたら、どのような内容になりますか?
HAI ROBOTICS
磯部さん

そうですね・・・🤔
まず、ACRという物流ロボット、ケースハンドリングロボットを最初に開発したのが私たちHAI ROBOTICSです。それから世界各国で実績を積み重ねて、ソリューションをブラッシュアップしてきました。関連する特許も多数保有しており大きなアドバンテージになっています。その意味でHAI ROBOTICSは、ACRというカテゴリーを生み出して、そして確立したパイオニアであり、現時点ではリーダーと言ってもよいのではないかと思っています。
HAI ROBOTICSのACRは以下の3つを特に重視して、様々な機能を備えてきました。
・効率性
・柔軟性
・自律性

これらは、日本ならではのきめ細かな物流サービスと、その高い要求水準にもよくフィットするものだと思います。ACRを中核に、倉庫全体の生産性と保管効率をバランスよく向上し(効率性)、また業務内容の変化や業務量の繁閑にも柔軟に対応して(柔軟性)、高いパフォーマンスを発揮する仕組みを構築します。そして、独自のアルゴリズムを備えたAIによって、そのパフォーマンスを(人による分析や判断を必要とせず)自律的に維持することができます(自律性)。

HAI ROBOTICS ACRが重視するコンセプト

トラロジ
ハードの性能という観点では、どのような特徴や強みをお持ちですか?
HAI ROBOTICS
磯部さん
保管効率は一般的な高さ2m程度のラック設備と比較するとかなり高く、2倍程度にはなるのではないかと思います。ロボットが通る通路幅は約1mでOKで、高密度で荷物を保管することができます。高層ラックと言っても構造は一般的なものなので、導入コストも高くはありません。他の大規模なロボットですと専用の特殊なラックを組まなければならずコストが高くなってしまいますが、ACRの場合はそのようなことはありませんので、トータルの導入コストとしては大きな違いがある(ACRの導入コストの方が低くなる)のではないかと思います。
ロボットの動作もスムーズで安定しており、これまでに提供したロボットはいずれも順調に稼働しています。特にアームの性能には自信がありますね。荷物の置き場所に少しくらいズレがあっても、問題なく取り扱うことができます。また、ROBODEXで展示したことがあり、日本のテクニカルセンターでも稼働しているHAIPICKは、荷物の大きさがバラバラでも、そのサイズを自動認識して、アームが幅を自動で補正して取り扱うことができるタイプです。これにより、荷物の大きさに応じて適正な保管スペースだけを割り当てることができるため、全体の保管効率をより高くすることができます。
トラロジ
けっこう大きなロボットだと思っていましたが、通路幅はたったの1m(約)でよいのですね😮フォークリフトに必要な通路幅の3分の1くらいですか。
他にはいかがでしょうか?

効率の高い、最適なワークステーションを自在に実現

HAI ROBOTICS
龍さん
作業場所となるワークステーションについて、多彩なデザインパターンを揃えていることも強みだと思います。コンベアラインやラックを柔軟に組み合わせて、様々な作業内容に対して最適な構成を提案することができます。数多くの事例を経験して積み重ねてきた、HAI ROBOTICS独自のノウハウですね。
ワークステーションの多彩なデザインパターン①
ワークステーションの多彩なデザインパターン②
ワークステーションの多彩なデザインパターン③
ワークステーションの多彩なデザインパターン④
ワークステーションの多彩なデザインパターン⑤
ワークステーションの多彩なデザインパターン⑥

パターン④の動画

パターン⑤の動画

パターン⑥の動画

HAI ROBOTICS
龍さん
例えば、バッファラックというものを活用するというパターンがあります。一般的には、ロボットからコンベアラインにケース/コンテナを渡して、そこで作業員がピッキング等の一連の作業(例:複数のアイテムをピッキングして、間口の表示器に指定された数量を投入して仕分けする)します。
バッファラックは、ロボットとコンベアラインの間で、荷物を一時的に保管する、その名の通りバッファとして設けるものです。ロボットからコンベアラインへの直接の受け渡しだと、一つのケース/コンテナについて作業員がピッキング等の一連の作業を終えるまでの間、ロボットは待っていなければなりません。一連の作業が完了してから、次のケース/コンテナに進むことができます。ロボットに待ち時間がある分、効率が下がってしまいます。
これを解消するのがバッファラックで、ロボットはまず全てのケース/コンテナを連続してバッファラックに投入してしまい、待機時間無しですぐワークステーションを離れて次の作業に移ります。作業員はバッファラックからケース/コンテナを取得して一連の作業を進めていきます。この時、作業員は一人とは限らず、複数人で同時に作業できるワークステーションをデザインすることも簡単にできます。
またこの間に並行して、次のロボットがバッファラックに新たなケース/コンテナを投入していくことができます。中間にバッファラックを置くことによって、ロボットにも作業員にも待ちによる時間ロスが無くなり、より効率よく作業を進めることができるというメリットがあります。
コンベアラインを長くして滞留できるケース/コンテナを増やす方法でも同じように効率は上げられるのですが、より省スペースなのがバッファラックの利点ですね。
これはあくまで一例ですが、このようなパターン、ノウハウが沢山あります。
バッファラック活用イメージ
トラロジ
なるほど、緻密で賢い仕組みですね🤩
別のロボット、例えばKIVAのような棚搬送AGVでは棚から物を取得するのが作業員になってしまうため、このバッファラックのような方法には向かなさそうですね。ロボットが自動でケース/コンテナを扱うことができるACRならではと感じました。
HAI ROBOTICS
龍さん
ロボットとワークステーションの間でのケース/コンテナの受け渡しについて話しましたので、それに関連するものとして「ハイポート」も紹介させてください。ハイポートはACRとの間でケース/コンテナを最大で8つ同時に受け渡しする機器です。受け渡し時間が最短になるため、その分ハイピック ロボットが効率よく稼働することができます。

ハイポートが稼働する様子 ※この動画では6つのコンテナを同時に扱っている。

ACRシステムをコントロールする頭脳、HAIQシステム

トラロジ
ワークステーションについて様々なデザインができる、自由度が高いというお話を伺っていて、そういった優秀なハードを賢く動かす、ソフトウェアも優れているのだろうなと感じました。
HAI ROBOTICS
龍さん
はい、HAI ROBOTICSのACRをコントロールするのが「HAIQシステム」で、ここに私たちが培ってきたノウハウが結集しています。ごく簡潔に言いますと、次のようなことができる、とイメージしていただくとよいかと思います。
・基幹システムやWMSなどの情報システムと連携
・倉庫の在庫データを、ACRの内外を含めて統合的に管理
・オーダーに基づいて、AIアルゴリズムを駆使して高効率な倉庫のプロセスを計画・実行。
状況に応じて動的に再構成
・ACR以外の機器(コンベアラインや、他のロボットなど)も統合的に、連携してコントロール。最大1,000台までの機器に対応可能。
※画像の全体を見るには横スクロールしてください。拡大もできます。
ACRシステムをコントロールする頭脳 HAIQシステムの構成
トラロジ
周辺のシステムと連携して、倉庫全体を総合的に管理・コントロールする。ACRだけでなく他の機器も一緒にコントロールできるからこそ、倉庫全体のパフォーマンスを高くできるのですね

スマートかつ柔軟に、様々な要件を実現。痒い所に手が届く👍

トラロジ
HAIQシステムのスマートさ、柔軟性がわかる、具体的な機能の例を挙げていただくことはできますか?
HAI ROBOTICS
龍さん

そうですね、色々なものがありますので・・・まず、荷主や商流といった大きなレベルの情報を管理するために、次のような機能があります。

◆荷主や商流の管理

【複数テナントの管理】
複数の荷主や商流、ブランドの荷物を、混在して管理することができる

【複数の流通チャネルや商流の管理】
店舗配送と宅配など、複数の流通チャネルを混在して管理することができる

HAI ROBOTICS
龍さん
続いて、入出荷の生産性や保管効率を高くするための、在庫の最適なコントロールについての機能例です。
HAIQシステムによって実現できる、インテリジェントな機能の例
HAI ROBOTICS
龍さん

◆在庫の最適なコントロール

【1コンテナへの複数SKUの混在保管】
1つのコンテナに複数のSKU(なるべく見た目の異なる物を組み合わせるよう推奨)を混在させて管理する。これによりサイズの小さなアイテム、少量のアイテムでも、コンテナへの充填率を高めて、保管効率を上げることができる。

【最適な入庫ロケーションの割当】
入庫時に、そのアイテムの過去の実績を基に、AIが出庫の頻度を分析して、倉庫全体としての生産性がもっとも高くなるよう入庫ロケーションを割り当てる。

【最適な出庫ロケーションの割当】
出庫時に、複数のケース/コンテナが必要だとすると、その瞬間の在庫およびロボットの配置から、もっとも早く出庫が完了する組み合わせをAIが即座に判断して割り当てる。

【ACRへの在庫の自動補充】
在庫のリザーブエリア(ACRの外で在庫を保管しているエリア)から、ACRの高層ラック(出荷の対象となるアクティブエリア)への補充を、AIが自動で判断して実行する。

トラロジ
人が頭を使って判断しないといけないことは全部AI、HAIQシステムが代わりに、最適にやってくれちゃう感じですね👍
HAI ROBOTICS
龍さん
最後に、これはHAIQシステムの真骨頂とでも言いますか、特殊な運用やプロセスへの対応力、高い柔軟性を備えています。お客様の要望に合わせて、効率が高いプロセスを、しかもその時々の状況に応じて柔軟にアレンジしながら実現することができます。具体例をお示ししたいところなのですが・・・ここはHAI ROBOTICSの特に重要な強みと言える部分でして、恐れ入りますが企業秘密となっており、記事にしていただくことができないのです😅🙇‍♂
トラロジ
企業秘密😵
なるほどー、では・・・絶対に記事には書きませんので、少しだけお話していただけないですかね?🤫
HAI ROBOTICS
龍さん
はい、少しだけ・・・(秘密の内容をこっそり教えていただきました)
トラロジ
なるほど、そんなことまで出来るとは・・・事前に想像した以上のスマートさ、柔軟性です。がんばって頭を使っても出来なさそうなことまで、HAIQシステムそしてACRがやってくれちゃうんですね🤯
HAI ROBOTICS
龍さん
ここでは企業秘密とさせていただきましたが、個別のお客様から要件をお伺いしたり、コミュニケーションを取らせていただく中では、どのようなことが実現できるかなど詳しくお話しますし、提案させていただきますので🙏

中国の爆発的な物量を捌いてきた実績

トラロジ
ここまで色々なお話をうかがってきて、HAI ROBOTICSのACRシステムがどんなものか、どのようなことができるのか、かなりイメージが湧きました。単に保管効率が高いとか、GTPだから生産性が高いとか、そういうレベルを超えた、事前に想像していた以上のスマートさ、柔軟性という感想です😍 複雑で高度な要件でも実現して、人による作業はごくシンプルで複雑さを感じさせない、そのようなことができそうですね。これまでに沢山の事例でユーザの要望に対応して、カスタマーサクセスを追及されてきたからこそのものだと推察します。
中国は、日本と比較してEC化率(小売に占めるEコマースの割合)がかなり高いですし(中国は40%超、日本は約10%で、中国が日本の4倍くらい)、日本にいらっしゃる観光客の「爆買い」にも見られるように、購買行動が凄まじい。繁忙期の注文の集中度合いは日本よりもずっと激しそうで、ACRはそれを捌くために活用されてきた実績があるのですよね?
HAI ROBOTICS
磯部さん
おっしゃる通りで、中国で繁忙期となると、それはもうものすごい物量になります。毎年11月11日が「光棍節(こうこんせつ)」または「独身の日」と言うのですが、色々なECサイトが一斉にセールを行うため購買が集中します。アメリカのブラックフライデー(11月の第4金曜日)のようなものですね。2021年には大手ECサイト2社だけでも10日間のセールで15兆円くらいの売上があったそうです。
(トラロジ補足:比較対象として、楽天グループのインターネットサービス全体での年間売上が約1.1兆円(2022年12月期)。10日間で、楽天の1年分の売上の13倍くらい、という計算になる。)
この動画がちょうどその独身の日に、EC物流センターでHAI ROBOTICSのACRが活用されている様子です。
独身の日にEC物流センターで活用されるACR
トラロジ
すごい規模ですね😵そしてやはり、自動化されていない物流センターと比べて、圧倒的に人が少なく見えます。

日本での展開にも自信あり!同時に、グローバルでの更なる成長を左右する局面と言う緊張感も

トラロジ
さて、ここから少し目先を変えて、HAI ROBOTICSが日本という国をどのように捉えられているのか、ACRのソリューションを引っ提げて日本でどのような展開をされていきたいと考えているのか、その辺りのお話をうかがっていきたいと思います。
HAI ROBOTICS
磯部さん
HAI ROBOTICSは世界の色々な国の中でも、日本のことを特別に重視しています。グローバルでは既に数多くの実績があり、今回のインタビューとデモ見学の中でトラロジさんにも感じていただけたのではないかと思いますが、私たちのACRは日本のきめ細かな物流ニーズにもフィットして高いパフォーマンスを発揮できるという自信を持っています。
ただ、自信がある一方で、日本は物流プロセスの品質の高さが世界でも有数であり、ユーザ企業の要求水準が非常に高いため、ここでしっかりと価値の高いソリューションを提供することができれば、その実績をまたグローバルに返し、今後更に成長することができる、そういう重要な局面であるという緊張感も併せ持っています。日本品質をまたグローバルに還元したいと考えています。

要件定義の精度を徹底追及することで、導入プロジェクトを成功に導く

トラロジ
日本での展開がHAI ROBOTICSにとっても勝負所ということですね。日本でのソリューション展開においては、特にどのようなことに注力されていますか?
HAI ROBOTICS
磯部さん
導入プロジェクトの初期に行う要件定義の緻密さ、精度には徹底的にこだわっています。ここで曖昧なものを残してしまうと、後で期待した通りのパフォーマンスが発揮できない可能性が高くなってしまいます。ロボットの導入では、導入して運用を開始した後に改善を重ねて徐々にパフォーマンスを高くしていった、というようなエピソードもよく聞かれます。それは確かに重要で有効なアプローチではありますが、私たちは出来るだけ早いタイミング、前の工程で徹底した検討、先を見越した検討を行うことで、最初から高いパフォーマンスを実現して、期待ギャップを小さくすることを重視しています。
トラロジ
最初の要件定義が成功の鉄則ということですね。情報システムでもそうですが、同じ検討や問題解決にしても、前の工程で行った方が、そのためにかかるトータルなコストは小さいと言いますしね。
HAI ROBOTICS
磯部さん
その通りですね。どうせやることなら、なるべく前の工程でやってしまおう、ということです。
なお、要件定義を徹底的にやると言っても、毎回毎回ゼロベースで検討して大きな労力をかける、ということにはなりません。色々なユーザに共通する部分、パターンのようなものはありますので、それをベースにしながら個別の要件に合わせてアレンジしていく、というようになります。

ACRの運用イメージを紹介

トラロジ
日本でよく適用されそうなパターンというのはありますか?
HAI ROBOTICS
磯部さん
様々あると思いますが、ここではその中から代表的なものを2つだけ紹介させていただきます。
まず1つ目は、バラ品をACRで管理・保管し、ケース品をACR外で捌く、というパターンです。
小売り店舗向けと通販向けのバラ品をACRのワークステーションでピッキングして、t-Sortやオムニソーターのような仕分けロボットを使って仕分けします。小売り店舗向けのケース品は、ネステナーなどを活用した保管スペースに保管しておき、そこから直接ピッキングします。ACRへの在庫補充もこの保管スペースから行います。
t-Sortやオムニソーターなど、HAI ROBOTICS以外の製品も含めて、最適な組み合わせを設計し提案させていただきます。
ACRの運用フローイメージ①

t-Sort

t-sort

出展:プラスオートメーションHP

オムニソーター

オムニソーター

出展:Roboware HP

HAI ROBOTICS
磯部さん
2つ目は、ケース品もバラ品も全てACRで捌くパターンです。バラ品についてはワークステーションにDPS(デジタルピッキングシステム)を備えて、ピッキングしながら仕分けしていきます。
ACRの運用フローイメージ②
トラロジ
なるほど。日本での実際の導入事例が見られるのが楽しみですね。
HAI ROBOTICS
磯部さん
日本での導入案件も既にいくつかが進行していますので、これから徐々にオープンにできると思います。導入先の現場を見ていただける機会も作れるかと思いますので、その際はぜひまた取材にお越しください。
トラロジ
ぜひよろしくお願いします!
今回のHAI ROBOTICSの皆様へのインタビューは以上とさせていただきます。お忙しい中、ご協力ありがとうございました😄

編集後記

筆者は2年くらい前からACRに注目していて、高密度保管と高生産性を両立するコンセプトと、Autostoreなど他のロボットと比較して導入コストが小さくなりそうだということに期待を感じていました。ですが、これから導入が進んで行くであろうソリューションなので、それほど沢山の情報は得られておらず、もやっとした理解に留まっていました。

今回HAI ROBOTICSの磯部さん龍さんに様々なお話をお伺いすることができ、またデモもしっかり拝見して、ACRの特徴や強みを具体的に理解することができると共に、事前の期待がより高まることになりました🙌
海外では沢山の事例がありますし、それだけよく考えられていて、とても賢い仕組みだな、というのが一番の感想です。本文の最初の辺りにデモが見られるテクニカルセンターについても紹介しているので、ぜひ見学に行かれるとよいと思います。

ACRについては、また導入事例などを取材して読者の皆様にお届けしたいと思います。

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