中国ヒューマノイドロボットの実力は?日本で開花か!? 2025CeMAT ASIAレポートNo.1

  • 2025年11月2日

2025年10月28~31日に上海で開催されたCeMAT ASIAに行ってきました。構内物流やサプライチェーンの最新ソリューションが出揃う大規模な見本市です。日本で開催される国際物流展の、中国・アジア版みたいなものですね。10万人以上もの来場者が見込まれるそうです😵
CeMAT訪問のレポート第一弾は、ヒューマノイドロボットに特化してお届けします。そして時を同じくして、日本でもドンピシャでヒューマノイドロボットについての先進的な取り組みが発表されたので、あわせて紹介・考察してみます!
2025 CeMAT ASIAに展示されるヒューマノイドロボット

2025CeMATの主役はヒューマノイド?

この1年以内に、SNS等でヒューマノイドロボットが人間に近いような、もはや実用化間近なのか?と思わせるような動きをする様子を何度も目にしてきました。みなさんもそうだと思います。例えばこういうのです。

AgiBot 工場や倉庫で作業したり、美術館で案内係したりしている。

Boston Dynamics 手を器用に使って工場で働いている。

Galbot 蹴っても、押しても引っ張っても倒れない。

なので、最新のソリューションが見られるCeMATの、今年の主役はきっとヒューマノイドなんだろう、どんなものが見られるんだろう!?とワクワクしていました。日本の知人たちも、みんなそんなテンションでした。
が・・・結論を先に言ってしまうと、CeMATではまだヒューマノイドは主役ではありませんでした。ここ数年のトレンドになっている自動倉庫型ロボットやパレットシャトルのソリューションラインナップが更に充実し、高機能化していることが目立ちました。未来というよりは、現在の成熟(※)を見た、そういう印象でした。
※類似のソリューションが多くなり過ぎている?ようにも感じられて、成熟というより混沌か、という気もしたのですが、それは次回に・・・

ヒューマノイドはまだ実用化に遠いのか?

”今回の展示会”の主役ではないというだけで、むしろ実用化はそう遠くない、と感じています。主な理由として3つ挙げます。

①現時点の先進メーカーは展示会に出ていなかった

先に紹介したYoutube動画は、AgiBotやGalbotという中国のメーカーのものですが、これらの、最先端でヒューマノイドをリードしていると見られるメーカーは今回の展示会に出ていませんでした。展示会に出す動機が、多くの人の目に触れさせたい、いわゆる営業やマーケティング目的だと考えると、今はまだその段階ではないということなのかなと推測します🧐今回は、今すぐアピールしたい別のソリューションを持っていて、人目を引く目的でヒューマノイドも置いている、そんな意図の展示が主だったように思います。
それから、CeMATは物流に特化した展示会ですが、ヒューマノイドの活用領域として、物流はおそらく有望ではあるものの、他にも製造、サービスなどなど非常に幅広いため、そもそもそこにズレがあって出展していない、というこはありそうです。

②多くのメーカーがヒューマノイドに参画しており、今後開発が加速するのが確実視される

実は、ヒューマノイドの展示自体は沢山ありました。2024年にはほぼ無かったのですが、明らかに増えています。十分に高機能だと感じさせるメーカーは少なかったのですが、今後メーカーの参入がもっと増えて、成長ペースは加速していくはずです(中国には今でももうメーカーが100社はあるという話も聞きます😲)。中国だけでなくTeslaやBostonDynamics、Amazonなどアメリカ企業も開発に注力していますし、フィジカルAIへの期待も加熱してきました。
この後のパートでいくつか、CeMATの展示を紹介します。

③日本でも本格的な実用化に向けた動きが始まった

CeMATと同時期にINSOL-HIGHと山善が、ヒューマノイドロボット(しかも理由①で触れたAgiBot)を試験導入して物流倉庫でのピッキング作業の自動化を目指すと発表しました。これも後のパートで少し紹介しますが、CeMATの展示例よりも高い品質で作業が行われていました。

CeMATでのヒューマノイドロボットの展示例

展示されていたヒューマノイドロボット(一部)

ちゃんと数えてないですが・・・色々で20近くのヒューマノイドロボットが展示されていました。その一部を紹介します。よかったものを選りすぐったというよりは、こんなのがありましたよと全体の感触をつかんでもらうつもりでピックアップしました。

HIKROBOT

ペットボトルを持って動かします。ペットボトルの置き場所にマークがあったので、定型的な作業を記憶させているのかなと思います。

UBTECH

ぬいぐるみを運んで箱に入れています。これは二足歩行ですね。UBTECHは事前に見た動画だとけっこう高度な動きもしていたと思うのですが、これはちょっとたどたどしかったような。トレーニング不足かしら🤔

DEOM

不規則に置かれた小さな箱をピッキングしています。

SEER

ぬいぐるみを目の前に・・・踊っていました。「いや取らへんのかい🫲!」って、見た人は全員、どこの国の人でもツッコミを入れたと思います😂料理するような動きもしていました。

HANGCHA

HANGCHA フォークリフトやクレーンなども扱う大手メーカーです。ケースを把持してラックに格納します。

今回の展示内容だけでヒューマノイドの実力を判断すべきでない

ちょっと面白おかしく書いてしまいましたし、実際CeMATに展示されていたヒューマノイドそのものは、今すぐ物流や製造の現場で実用的に使えて、費用対効果が合いそうなレベルとは感じられませんでした。「ヒューマノイドを見たけど、まだ実用レベルではない」という感想も沢山聞くことになりました。
でも・・・一通り見終わって、落ち着いて考えてみますと、筆者としては今回の展示の印象だけで判断するのはおそらく短絡的であり、先に挙げた3つの理由の通り、むしろ実用化は遠くはないだろう、という見方をしています。今「ヒューマノイドは使えそうにないなぁ」なんて書いちゃうと、1年か2年後くらいに恥をかいてしまいそうな気がしました😅

番外編 別の意味で注目を集めていたのは・・・

こんな人もいました😂遠目でヒューマノイドに見間違えちゃう?Quciktronブースの方で、前に人だかりが出来ていました。
(そんなに注目されるなら、とこの記事のアイキャッチをこの画像にしてみました👀)

2025 CeMAT Asia にて、ヒューマノイドにコスプレしたQuciktronブースのスタッフさん

要注目!同時期に日本で、ヒューマノイドロボットの実用化に向けた取り組みが開始

物流倉庫でのピッキング作業にヒューマノイドを活用

2025年10月30日にINSOL-HIGHと山善が、東京納品代行(センコーグループ)の物流倉庫にヒューマノイドロボットを試験導入して、ピッキング作業での実用化を目指すことを発表し、その時点で想定されているユースケースや性能についてデモンストレーションを行いました。20社を超えるメディアが集まり、ビジネスニュースと言えば、の「WBS(ワールドビジネスサテライト)」(テレビ東京)で放送されるなど、大変注目を集める取り組みになりました。

導入したヒューマノイドは、今回のCeMATに出展していなかった先進メーカーとして先にも触れたAgiBot社製のG1(AMRタイプ)です(※)。
※2025年10月に新しい機種「G2」が発表されています。INSOL-HIGHと山善の取り組みも今後はG2に移行していくものと思われます。

INSOL-HIGHと山善が試験導入したヒューマノイドロボット、AgiBotのG1

CeMATの展示よりも高品質の動作をデモンストレーション

AutoStoreの作業ステーションを想定して、コンテナ内にランダムに配置された小さなぬいぐるみを上手くピッキングして出荷用のコンテナに移しています。ぬいぐるみ以外にも、初見になるボール状のものや、名刺入れのピッキングも成功させていました。CeMATで展示されていたものよりも、かなり品質の高い動作に感じられます。繊細で丁寧な日本の現場にフィットするよう、独自にヒューマノイドロボットに動作を学習させていくことで、同じロボットでも日本でこそ高い品質が実現できる、という狙いがあります。

(日本でのこの取り組みについては近日中に別記事でもっと詳しく紹介します!)

 

以上、CeMAT訪問のレポート第一弾としてヒューマノイドロボットに特化した内容をお届けしました。来年か再来年にはCeMATでもものすごいヒューマノイドが見れそうな予感です🤖

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